第7話 お礼という爆弾

ガタンゴトンガタンゴトン…電車とは不思議なもので気がつくと寝てしまう。いつもは大体、宇都宮に着く頃に自然に起きるのだが、今日は誰かに呼ばれているような気もする。


「森川くん、おはよう。おーい。森川くん?」

「ああ?んだよ?」

「お、起きた。おはよう。森川くん」

目の前に結城が居た。ちょっと困ったような照れているようなそんな表情をしている。

「なんだよ。結城なんとかだったな」

「と、わ。永遠と書いて永遠です!」

どうやら気に入らなかったらしく今度は怒った表情をしている。昨日とは打って変わって表情がコロコロ変わり見ていて面白い。一方でこんな彼女らを狙う連中がいると思うと許せなく思う。


「へいへい。永遠に寝ていたいから邪魔すんな」

「それ、死んでるよ?!」

「だからほっとけ」

秋次は寝たふりをしてふざけて見せる。

「そうじゃなくて!聞いてほしい!」

「んだよ?なに?」

結城があまりに必死なので体を起こす。


「昨日はごめんなさい。ちゃんとお礼を言えてなかったから。だから、ちゃんと言いたくて。本当にありがとうございました。」

そう勢いよく言うと結城は深く頭を下げたまま動かない。

「お、おい。やめろ」

電車の中にはうちの学校の生徒もいる。側から見れば不良に全力で頭を下げる女子生徒という構図だ。しかも結城は学校でも人気があるから知っている人は知っているだろう。なんだが電車の中がザワザワしている気がする。

「はぁ…」

ほらまた面倒な事に巻き込まれるに違いない…

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