第4話 ほっとして

「大丈夫か?」

秋次は結城に怪我ないかよく確認する。怪我はなさそうだが、ツンとした臭いとスカートが濡れていることに気がついた。

「う…うん。でも立てないかも」

彼女はそう言うと緊張の糸が切れたのか涙が溢れ出した。


「あー。泣くなー。な?な?」

秋次は困ってしまったが、とりあえず上着を脱いで結城の腰に巻きつけ濡れたスカートが見えないようにした。

「ここにいるのはまずいから。今からちょっと移動するからな」

数名の通行人がこちらを見ている。ゴタゴタはごめん被りたいので、秋次は結城を後ろににしゃがみ彼女の腕を掴み、背負うことにする。


「あの…ごめんなさい」

結城は謝りながらも意図を理解したようで腕を秋次に回してくれた。

「もう大丈夫だからな。そこの公園に連れてくから落ち着いたら帰れ」

「は、はい」

近くの公園まで結城を背負って行く。

「あの、も、森川くんだよね」

表情は見えないが声が少し緊張しているのが分かった。ちょっとは気を利かせてやりたいが秋次も何を話せばいいか分からないくらいには想定外な状況だった。


「ああ。」

「け、怪我してない?」

「ああ。」

「そっか…」

「ああ。」

そんな会話をしていたら公園に着き、結城を近くのベンチに降ろした。

「少しは落ち着いたか?」

「うん。ありがとう」

「着替えはあるのか?」

「あ、うん。部活のジャージが。そこのトイレで着替えて来る」

「わかった。俺は行くから」

「ま、待って!あ、あの」

「はぁ…着替えしてる間はちょっと離れてるよ。早くしろ。駅まで送る」

「あ、うん。ちょっと待ってて」


永遠は急いでトイレに入り着替えを始める。

ふと、さっきの出来事を思い出してしまい着替えの手を止める。

「うぅ…もうよく分からないよ」

確かに絡まれた時は怖かった。助けてもらってホッとしたし、背負われている時には気持ちも落ち着いてきて、恥ずかしかった。

「しかも、私…」

下を見てますます恥ずかしくなった。恥ずかしさを忘れるため、さっさと着替えて外に出た。


「も、森川くんいる?」

「ああ。行けるなら行くぞ」

ぶっきらぼうな感じだけど、ちゃんと居てくれたことが嬉しかった。

「上着、綺麗にして返すね」

「ああ。いつでもいい」

先を行く森川くんの後について駅に向かう

「森川くんも電車?」

「ああ。ちょっと待ってろ」

「え?」

森川くんが自販機でココアを買って渡してくれた。

「あのお金は」

「いらねえよ。」

そう言うと森川くんはまた先に行ってしまう

「あ、待ってよ」

急いで追いかける。森川くんは見た目はちょっと怖いけど本当は優しい人だと永遠は思った。

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