第2話 なんでこんな事に

夕方、薄暗苦なってきた頃だ。秋次は帰るために駅に向かっている。最近の宇都宮駅周辺はかなり栄えてきた。とは言え光があれば影もあるように少し離れれば目につかない所によろしくない連中はいる。


路地をちょっと見た時に遠目に見えた。5人の不良どもが一人の女を囲んでいるようだ。あまり良い状況ではなさそうに見える。駅周りには警官がよく歩いているが、少し裏に入れば目につかない。警察を呼びに行く時間はなさそうだ。


「めんどくせぇ…」

見て見ぬふりをするか、間に合わないが警察を呼ぶか、はたまた厄介ごとになるか…考えるのも面倒だ…。

「ま、なるようになれ」

まずはよく状況を確認するため近づくことにする。

「な?ちょっと俺たちと来てくれたらいいから」

「や、やめて…ください」

「ほらほら、嫌じゃないんだろ?」

不良どもが女…いや女の子か。隙間から見えるのは制服だ。多分学生だろう。

不良どもが手を伸ばし、無理矢理に触ろうとしている。女の子は必死に抵抗している。恐らくこのまま放置すれば、このまま襲われオモチャにされてしまうだろう。ぼろぼろにされてあの子の人生は悲惨なことになる。


「はぁ…めんどくせぇ…」

これで見過ごせばそれはそれで後味が悪い。面倒だが自分のためだと思い、一気に距離を詰めた。






結城永遠の放課後は忙しい。永遠は成績もよく先生からの評価も高い。そうなると色々頼み事も多いし、部活や生徒会でも頼りにされることが多い。

永遠自身、それらは嫌ではないが私がやるのが当たり前みたいな空気があるのは正直、嫌だなって感じている。


「永遠〜?大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっと考え事してたの」

永遠に声を掛けてきたのは親友の西村沙希だった。中学校から一緒で時には永遠、沙希どちらかの家にお泊まり会をしたり、家族ぐるみで遊びに行ったりするくらい両親とも仲がいい。


「また仕事任されてんもんね〜。」

沙希はそういいながら毎回手伝ってくれている。

「ありがと。その代わり部活は頑張ろ」

「そうこなくっちゃね!」

沙希はテニス部に所属している。エースとして活躍している。永遠は正式にはテニス部ではないが、沙希と一緒に参加している。沙希ほどではないが運動神経もよいので練習相手にはお互いちょうどいいし、ペアになってもお互いよく分かっているからかなり強いと有名だ。

「ちゃっちゃとやっちゃおう!」

永遠と沙希は急いで片付けてしまうことにした。


部活を終え、教室で帰りの用意をしていると沙希が入ってきた。

「永遠、ごめん!今日はママが迎えに来て病院に行かなきゃ」

「あ、うん。大丈夫だよ。おばあちゃんだよね」

「うん。ほんとごめん!帰り、大丈夫?」

「大丈夫だよ。私をなんだと思ってるの?」

永遠は笑ってかえす。普段は沙希と帰るが最近、沙希のおばあちゃんが入院したそうで沙希のお母さんが仕事帰りに迎えに来て病院まで行くことが何回かあった。

「そりゃー私の親友?」

「沙希もね!」

「でも、いっつも心配なんだよ。前に絡まれたじゃん」

「大丈夫だよ。大通り通って帰るし」

前に一度、他校の男子に絡まれたことがあったが、沙希が大声出して二人で逃げ切ったことがあった。

「なんかあったら大声だからね!じゃまた明日!というか夜Lineする!」

「うん!オッケー」


しかし、運が悪いのか今日に限って普段見かけない柄の悪い人たちに捕まってしまった。

5人の男達につけられて逃げるうちに気がついたら路地に入っていた。冷静に逃げたつもりが相手の思う壺だったようだ。多分、他校の不良だろうか。


「や、やめてください」

永遠は大きめの声を出したつもりが、声が震えている事に気がついた。息が荒くなり心の中に恐怖が広がって来ているのが分かる。

「な?いいだろ?」

永遠の腕を誰かが掴み、引っ張ろうとする。

どうにか抵抗するが、他の男達も触ろうしてくる。

「い…あ…」

永遠はこの先何が起きるのか、考えた途端、頭が真っ白になり、パニックになってしまった。

「暴れんなよ!この女!」

「泣いてんぜ、こいつ」

「ほらほら、気持ちいいことしようよ」

逃げなきゃ、声を出さなきゃ頭ではわかっていても、身体が言うことを聞かない。

「た、たすけて…」

涙で視界が歪む中、男達の後ろから金髪の柄の悪そうな誰かが近づいて来るのが見えた。

「お願い…たすけて」

永遠はあまりの恐怖で力が抜けてへたり込んでしまった。

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