第3話 とは言え、触り心地は良かった

 勇者の娘メリアは清楚なお嬢様だ。


 なにせ表情は常に朗らかで、所作は頭から爪先まで淑やかで、言葉遣いも丁寧なのである。


 ところが、そんな清楚な印象と勇者の娘という素性とは裏腹に、この少女はエロい。


 それも酷く。


 今も気だるそうに床に寝転がり、足元でも胸元でも隙という隙を見せつけていた。


 どうやらヴィヴィを誘っているらしい。


「……てめぇ、それでも本当に勇者の娘か?」


 ヴィヴィは思わず溜め息まじりに聞いてしまう。


 するとメリアは、少し考えた様子を見せ、顎に指を当てながら言った。


「……確かに私は筋骨隆隆とは言えませんが……、決して貧弱というわけではありませんよ」


 メリアは言いながら、むんっと胸を張ってみせた。


 ただ、それは質問の筋肉とは最も無縁な柔らかな物体二つを見せびらかすような、ヴィヴィを誘っているようにしか見えないポーズで、ヴィヴィはまた溜め息をついた。


 どうやらこの少女は、何をしてもエロいらしい。


 しかし、ヴィヴィの溜め息を見て取ったメリアは、自身の言葉が疑われたと思ったようで、


「あら。そんなにお疑いでしたら、お触りになって確かめてみても構いませんよ?」


 そう言ってヴィヴィの手を取り、自分の太ももに押し当てた。


「あ、おい――待て――」


 ヴィヴィはまた強引な誘いを受けたと思い、そう制止の言葉を発しかけたが、少し驚いた。


 その太ももは、正直言えば昨晩も散々触ったのだが、改めて意識して触ると、確かに貧弱とは言えなかった。


 程よい硬さと弾力性を持つ筋肉が感じられた。


 これに魔力を込めれば――、なるほど、昨晩の決闘時のような俊敏な動きもできるはずだ。


「まぁ、悪くねぇな……」


 ヴィヴィは思わず呟く。


 するとメリアは、ヴィヴィが滅多に褒める人間ではないと理解しているため、嬉しそうな顔になった。


 ただ、


「よろしければ、もっとお触りになったり、舐めてもよろしいですよ」


 そんなことを言うものだから、ヴィヴィは即座に考えを改め、少しでもこいつに感心した自分が馬鹿だった、と溜め息をもう一度ついた。

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