1ー2事務局と笠原工業

 事務局は違法オートマタを管理する機関だ。


 オートマタは主に医療や警備の現場で利用されており、今では街中に配備され、すっかり生活に溶け込んでいる。人型が主流で、近年では人間と区別がつかない機体まで出回っている。


 人間との区別をつける方法は主に二つで、”まばたきをしない”こと”頭上に円環が表記されている”ことだ。そして最低限これが守られていることが正規品の証でもある。

 そして現在、メトロシティ及びエリア内に流通しているオートマタ製品のほとんどを製造しているのが、笠原工業だ。ひと昔に一度衰退したメトロシティの経済や治安を急速に回復させた会社でもあるが、笠原工業は軍需産業にも特化した企業であることは表面上は知られていない。戦争が起きている北国へ売却するために違法オートマタを製造している事実を知っているものは、伊野田たち以外にはいない。


 事務局は、裏で違法機体を製造している笠原工業とは対立関係にある。かつての繁栄を取り戻したかのように見えるメトロシティには、まだまだ整備が整っていない場所が多く存在し、中心地以外の裏道に入ると途端に治安が悪くなる。街を出るとそこは荒地が広がり、違法機体を模倣して製造されたオートマタが彷徨い、それに関連する事件がたびたび発生する。

 事務局は、そんな違法オートマタ絡みの案件を取り締まる窓口としてメトロシティに拠点を構えている。違法オートマタを掃討する業者も年々増えていき、彼らの多くは事務局を通じて仕事をしている。


 伊野田もその1人だ。事務局員であり、彼の目付け役である琴平と行動を共にし、情報を元に違法オートマタの発生場所に駆け付け、対処している。


 そんな彼には変わった過去があった。伊野田は、笠原工業によって新種違法オートマタ製造のために造り出されたデザイナーベイビーなのだ。紆余曲折在り事務局側にいるが、真人間にもオートマタにもなり損ねた彼の存在を危険視する局員は少なくない。伊野田を笠原工業のスパイだと思っている局員もいる。だから目付け役の琴平が常に同行しているのだ。


 琴平により”存在が不安定なモノの監視をしている”と局全体に示し、尚且つ伊野田自身がオートマタの監視掃討の業務を執り行うことで、事務局に対し”自分は裏切り者ではない。自分は事務局側の立場である”と行動で表明してきた。


 拍子抜けするほど簡単な仕事もあれば、肘から下が義手になるほど過激な事案もこなしてきた。オートマタ相手の仕事にさほど苦労はないが、オートマタに順応するように製造されたため、人間に対しては問答無用でアレルギー反応に近い症状が出るのがネックだった。それでもあいつよりはマシかもしれない。


 笠原工業で、実際にデザイナーベイビーからオートマタ化実験されたウェティブ・スフュードンとは。

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