46.マジカル・テキチセンニュウ
本部の最下層、零番ゲートの前には私たち三人と
「三十年。そう……三十年だ。ずっとこの時を待ちわびていた。……桜子の仇は討った。そして彼女との約束を果たし真の平和を手に入れるために、我々にはなさねばならないことがある。だが……私にとって君たち魔法少女は実の娘のようなものでもある。どうか皆無事に帰って来てくれ。……健闘を祈る」
『セブンス、君が私を運んでくれ』
「あ、はい。……その、飛んだりはできないんですね」
『やろうと思えば可能だが無駄な魔力の消費は極力避けたい。そして今回は敵の殲滅が目的ではない。君たちも無茶をし過ぎないように頼む』
「おっけー」
「りょーかいです」
『……それでは行こうか』
『転送開始』
わずかに空気が揺れる音がした後、次第に重力が弱まっていくような奇妙な感覚に襲われる。そして周囲の景色が一変すると共に体が宙に浮かび上がった。どうやら転送が完了したらしい。
そこはなんだか荒涼とした世界だった。うっすらと発光する材質不明の足場がずっと地平線の彼方まで続いている。空は暗く、ところどころに謎の白い球体が浮かんでいる。だがそれ以外は何も見当たらない。私の腕の中で
『予定通り侵入には成功した。次はこの空間の核を探し出す』
「えっと、見た感じどこにもなさそうですけど……。そもそもここってどのくらいの広さなんですか?」
『空間の規模自体はそれほどでもない。ちょうど月より一回り大きいくらいだ』
「ええ!?」
「うーん、やっぱ規模感っていうかそういうのは人間とは違うのね」
『大丈夫だ、すぐに見つかる。……うん、核の位置を特定した。どうやらこの下だな』
「下ですか? この地面、なんだか掘りにくそうですよー」
『その必要はない。我々にはセブンスがいる』
「なるほど……。じゃあ二人とも、手を」
「ほい」
「はーい」
「
滲みだす魔力が空間を歪め、私たちは亜空間へと飲み込まれる。そのまま二人を振り落とさないように気を付けながら、その発光する大地へと飛び込んでいく。
「それでその核ってのを見つけてどうするの?」
『私が直接核に干渉して支配権を奪う。そうすればこの空間を自在に操ることができる。……この
「はえー、さすが
それにしてもこの大地にはいったいどのくらいの深さがあるんだろうか。最高速度ではないにせよ、今の移動速度は音速に匹敵するほどのものだ。数分と言えどもうかなりの深さまで来ているはずなのだが。その時、さらに深い場所からかすかに魔力の気配を感じた。他の二人も同じようにそれを感じ取ったようだ。
「もしかして、この魔力の発生源が……」
『ああ、そこに核がある。敵はまだこちらの侵入に気づいていない。今のうちに接近しよう』
「わかった。しっかりつかまってて」
私はさらに速度を上げ、その場所を目指してひたすら亜空間の中を移動する。そこに近づいていくほどに感じ取れる魔力も強くなっていく。そして突然視界が開けた。そこには大きな空洞があった。その閉鎖された球状の空間からはなんだか息苦しさと圧迫感を感じる。そしてその空間の中央に何かが浮かんでいる。形は三角形が合わさったような、確か正四面体と言うんだったか、そんな形をしている。色は黒くその金属質な表面には複雑な刻印が施されている。
『見つけた。あれがこの空間の核だ』
周囲からは敵の気配は感じられない。ゆっくりとその物体に近づいて
「うーん、さすがにこれはあんまりかわいくないですね」
『言いたいことはわかるがそこまで気を使っている余裕はなかった。数分もあれば支配権を奪取できるだろう。それまで周囲の警戒を——』
その瞬間、不意に周囲の壁の色が赤く変わり不気味な低い音が響き渡る。同時に周りから強い魔力を放つ何かが複数接近してくるのが感じ取れる。どうも敵に悟られてしまったらしい。
「もしかしてなんかやらかした?」
『……問題ない、想定の範囲内だ。君たちは敵の迎撃を頼む』
すると壁の一部に穴が開いてそこから何体もの
「さっちゃんは右の敵を、なっちゃんは
「あいよ」
「わかった」
夢の魔力が増大していくのが感じ取れる。ドリームスターライトは全勝不敗の魔法少女、その戦いぶりは一方的なものだ。彼女の前ではどんな敵もただの的でしかない。
「
その声と共に周囲に光が満ち、遠くから何かが貫かれたような音が聞こえた。
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