第18話 楽しいお祭り!
控室を後にした俺は、外で待っていた皆に取り囲まれていた。
「よくやったな! アラン君! 私は絶対に優勝すると思っていたがな! はっはっは!」
ダリア先生は、そう言いながら俺の背中をばしばしと叩く。痛い。
「うふふ、さすがはアランちゃんね。ご褒美に……何でもしてあ・げ・る」
そう言って俺の右腕に胸を押し当てるメリア先生。
「ひっ!?」
しかし、背後でニナが目を光らせていたのですぐに離れた。
「教師として、節度を持ってアラン様に接してくださいね」
「わ、分かってるわよぉ……。そんな怖い顔をしないでニナちゃん……!」
「怖い顔なんてしていませんよ」
実にざんね――ではなく、ありがとう……ニナ……。
「優勝したってことは……お兄さまがさいきょーってことだよね~? いいな~! 私もさいきょーになりたい!」
プリシラはいつも通りだ。来年は一応プリシラも出場できるが……正直、病弱な妹が野蛮な悪役令嬢どもと戦うところなんて見ていられないぞ!
――そうか、俺の試合を見ている時のニナはこんな気持ちだったのか……。
「ご無事で何よりです、アラン様……。優勝……おめでとうございます」
「うん。いつもありがとう、ニナ」
俺は、無理をして応援してくれたニナにお礼を言う。
「そ、そんなっ! もったいないお言葉ですっ!」
相変わらずのオーバーリアクションだな。それなら、これから毎日礼を言ってやるぜ!
「プリシラも、応援ありがとう」
「いつもはかわいいけど、今日はかっこ良かったよ! お兄さま!」
「…………そ、そうなんだ」
そう言われると素直に喜べないような、複雑な気分になるぞ。いつもは威厳が足りないということか……。
「――メリア先生とダリア先生も、ありがとうございました。僕が優勝できたのは、優秀な先生方が教えてくださったおかげだと思います」
とりあえず、痴女――じゃなくてステキな先生方には、それっぽいお世辞を言っておく。二人とも、色々とヤバいけど優秀なのは事実だしな。
媚びは売れるときに売っておこう!
「…………っ! 一緒に……住みましょう」
「へぇ?」
「何でもしてあげるわ」
「メリア先生……?」
まずい、メリア先生がさっきよりガチのトーンでやばいこと言ってる!
というか、住み込みで家庭教師やってるんだからもう一緒に住んでるだろ。これ以上なにを求めてるっていうんだ……!
「愛おしい……」
メリア先生が暴走する一方、俺のことを見つめながら小声で呟くダリア先生。
「子どもに戻って……キミと出逢いからやり直したい……」
「戻ってきて下さいダリア先生」
この人は自分がヤバいことをあんまり自覚してなさそうなヤバさがあるんだよな……。
「ええ、そうね、愛おしいわ」
「愛しくて愛しくて仕方がない……」
「あ、あの、待ってくださっ――」
そんなこんなで、俺は感極まった先生二人に揉みくちゃにされ、人として大切な何かを歪まされるのだった。
感想を言うと、メリア先生は甘い匂いがしてかつ柔らかく包み込んでくれるような感じで、ダリア先生は爽やかな香りかつ筋肉質で心地よい弾力がありました。
あと、ニナの目がすごく怖かったです。
*
それからのことはよく覚えていない。
「……………………っは?!」
しばらくのあいだ夢見心地だった俺が正気を取り戻すと、一人だった。
力比べの儀が終わったからといって、精霊祭が終わるわけではない。むしろこれからが本番である。
プリシラは前日に話した通りドロシアやニナと一緒、メリア先生とダリア先生は痴女と間違われて(?)衛兵に捕まってるし、お父さまは精霊祭を運営する側なので忙しい。
……となると、一緒に見てまわろうと誘えそうなのはレスターだけだったのだが、控室で会った後は姿を見ていない。
レスターにも一緒にお祭りを回る友達がいるのだろう。
仕方ない。
「――ソロプレイは……俺の得意分野だっ!」
闘技場からすこし歩いた場所にある大通りは、猫耳のカチューシャやら蝙蝠の羽やらを付けた大勢の人達で賑わっていた。
精霊祭では皆が様々な仮装を行うらしい。……それハロウィンじゃん。
「そうか……俺はハロウィンもどきのお祭りに参加させられていたのか」
驚愕の事実である。
「設定の作り込みが甘い!」
もっと世界観にオリジナリティを出せ!
「例えばそうだな……こんなのはどうだろう――
十年に一度行われるマガルム王国の奇祭【フェルネダ・フェスト】。それは、かつて【ガーガンドラの杖】によって【アルマガ=グレンニール骸核】を【
「ねーおかーさん! あの子だれとはなしてるのー? 一人なのにー」
「しっ! 見てはいけませんっ!」
「………………」
精霊祭は、とても心温まるお祭りです。
明日も楽しみだぜ!
*
そんなこんなで、精霊祭二日目。
俺は――
「グオオオオオオオオオオッ!」
「……かなりまずいな」
帝都の中央広場で巨大な魔獣と対峙していた。
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