My Routine
――……ピリリリ ピリリリ
耳元で聞き慣れた機械音が鳴っている。手探りでスマートフォンを探し出し、霞む目で操作する。午前四時ジャスト。指をスライドさせてアラームを止め、ベッドの上で軽くストレッチをした。東の空が少し明るいけれど日の出はまだのようだ。
「……おはよう世界」
一人暮らしの小さな部屋では返事はない。かわりに外から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。うん、いつもの朝だ。
「おはようポット君」
電気ポットの電源を入れて水を沸かす。水蒸気のあとにピーという返事が返ってきた。気を利かせてくれてありがとう。その返事のかわりにとくとくと注がれるのは透明な液体だ。
私の朝は一杯の白湯から始まる。コーヒーでも緑茶でもなく白湯。絶対に白湯。夏でも白湯。理由は健康のためでもあるけれど、お金がなかった頃からのルーティンと化してしまっているからというものある。寝起きにあたたかいものを飲むと何となく頭が冴えていいし。
白湯を一口含み、ほっと一息。クーラーの効いた部屋で季節外れの湯気を眺める。少しずつ覚醒してきた頭の中は徐々に世界が広がっていく。今日の天気に今日の予定、今日の献立、明日までの細かい時間割。それらをゆっくりと頭の中で構築する。よし、今日も大丈夫だ。
「さて、始めるか」
窓際に設置した椅子に座り、目の前に鎮座するブラックボックスの電源を入れる。昨年購入したこの机・椅子・パソコンのセットは一世一代の買い物だった。なけなしの貯金を崩して揃えたけれど、おかげでこうして快適な環境が整っている。
指を組んで頭上で大きく伸ばす。凝り固まった肩と背中をほぐしたら準備万端。さぁいつもの朝を始めよう。
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