最終章 そのニ
ガザラは両腕のハサミを振り上げ、全身の関節部から煙を噴き出す。強烈なエネルギーが迸り、やがてガザラの口が開くと真っ赤な光波熱線が発射された。
熱戦は地面に着弾すると同時に爆発しながらラグラに迫る。しかしラグラもまた背鰭から激しく放電しながらエネルギーを溜め、口からレールガンとは違う電撃ビームを放った。
ガザラの赤熱光波熱線と、ラグラの超電磁ビームがぶつかり合う。強烈なエネルギーのぶつかり合いで大爆発が起き、今度は小規模ながらももう一つのきのこ雲が発生した。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっっ!!!」
大爆発の中を突っ切り、ガザラとラグラが再びぶつかり合う。後ろ足で立ち上がったラグラの前足が振り下ろされ、それをガザラのハサミが真正面から迎え撃つ。しかしパワーの差と、ハサミの器用さでガザラはラグラの前足を横にいなし、ラグラは勢い余って地面に突っ込んでしまった。
ガザラはその隙は逃すまいと再び口から赤熱光波熱線を放つ。背中を焼かれたラグラが悲鳴を上げ、しかし尻尾を思いきり振ってガザラの足を払う。ガザラの巨体がよろめき、赤熱光波熱線があらぬ方向に飛んでいく。その間に体の向きを変えたラグラがガザラの右のハサミに噛み付いた。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
東京の時とは比べ物にならない程の電撃が流れて、悲鳴を上げるガザラ。思わず倒れ込み、のたうち回る。ラグラは逃すまいと噛み付く牙に力を込めて、更に電撃の威力を上げていく。
しかしガザラは無事な左のハサミをラグラの腹に何度も何度も突き刺す。東京ではいとも容易くラグラの腹を突き破ったが、頑丈になったラグラの皮膚には中々ハサミが通らない。
だがガザラはハサミに赤熱光波熱線のエネルギーを込めて突き刺すと、ラグラの腹部が大爆発を起こした。ラグラが思わず悲鳴を上げ、口を離した瞬間を逃さずガザラはハサミを引き抜く。そして素早く起き上がると、赤熱光波熱線をラグラの腹部の傷口に放つ。
「ぉぉぉぉぉぉぉんっ!!」
ダメージを負ってのたうち回るラグラ。しかしそれでもなおガザラを睨み据えて口から放った超電磁ビームがガザラの甲羅を撃ち抜く。
だが、甲羅に傷は付かなかった。ラグラがその光景を前に動揺を見せ、再度超電磁ビームを放つ。今度はガザラの腹部に直撃するものの、甲羅の下の肉体には全く届いて居なかった。
核エネルギーを吸収し、爆心地を生き延びた二大怪獣。だが、吸収出来たエネルギーの量には差があった。ガザラの方がラグラよりも核エネルギーをより多く吸収した分、遠距離攻撃での消耗は少なかったのだ。
超電磁ビームを何度も放つラグラ。だが放てば放つ程、超電磁ビームの威力は弱まっていく。そして何より、ガザラはその超電磁ビームに使われた核エネルギーすら吸収しつつあったのだ。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
再びガザラの全身の関節部から蒸気が噴き出す。エネルギーが迸り、口が開く。ラグラは思わず後ずさるが、もう遅い。
放たれた赤熱光波熱線が、高熱のあまり青白く染まりながらラグラに浴びせられた。ラグラは悲鳴を上げて逃げようとするが、あまりのダメージに逃げられない。そのまま地面に倒れ込み、動けないその身体に更に熱線が叩き込まれる。
やがて、ラグラの悲鳴が止む頃。三度目のきのこ雲が大戸島に立ち上った。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
勝鬨を上げ、動かなくなったラグラの死体から放たれる放射線を全て吸収するガザラ。やがて放射線レベルがガザラから発せられる物だけになり、この世で最も強い存在であることを証明したガザラがゆっくりと海へと向かって行く。
核攻撃のクレーターを乗り越え、僅かな残って居た砂浜を踏み締めて海の中へ。
「ガザラ、太平洋に沈んでいきます………」
「進行方向は?」
「今のところ、マリアナ海溝方面に向かっている模様」
「きっと、食事を終えて住処に帰るんだわ」
戦いの一部始終を見守って居たミサは、海上自衛官達からの報告を聞いて呟いた。
「今のガザラは核ミサイルの放射能すら餌に出来るとわかったんだ。今はまだ腹一杯だから十分かもしれんが、いつかまた地上に核エネルギーを求めてやって来るぞ」
「いつか?いつですか?」
「分からない。明日かもしれないし、一年後か百年後かもしれん」
ガザラの生態は未だに謎に包まれている。そしてそれを解き明かす事は、人間には不可能かもしれない。
「これから先、私たちはどうすればいいのでしょう?」
人類の最大の火力を持って殺しきれない怪獣を、一体誰が理解しうると言うのだろうか。もしまたガザラが地上を焼き払いにきたとし、一体どんな兵器がガザラを討伐しうるのだろう。
「ガザラ………貴方は一体、なんなの?」
ミサの疑問に答えるはずもなく、ガザラは海の中へと姿を消すのだった。
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