最終章 深海獣 覚醒
最終章 その一
燃える、燃える、溶ける。身体中が炎を超えた炎で包み込まれ、高熱を放つ光になっていく。
あとちょっとだったのに。あともう少しで餌にありつけたと言うのに。あの空から落ちてきた何かが光と共に弾けて、二体の怪獣は全身が溶けていくのを感じていた。
このままでは死ぬ。そう判断した片方は最後の力を振り絞り、全身から再生液を捻出した。しかしそれはこの光熱の中では液体として存在することはできず、一瞬にして蒸発してしまう。
そしてもう片方は、甲羅の再生に全神経と全エネルギーを集中させ、この光熱の中を耐え抜こうとした。だが、甲羅をどれだけ再生させても、この熱で溶ける速度の方がずっと早い。
そもそもどちらもエネルギーを使い果たしているのだ。この人工的な太陽に等しい空間の中で生命が思考できる程長く生存できているだけでも奇跡。そしてその奇跡も終わりを告げようとしていた。
ガザラの甲羅と、ラグラの骨が溶け始める。水分は蒸発し、血液は沸騰し、肉が溶解する。更に大量に発生した放射線は、二体の怪獣のあらゆる生命活動を妨害する。
二体の怪獣はこのまま肉片すら残さず溶けて消えていく。筈だった。
「「ーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」」
だが彼らの生命力は未だ生存を諦めてはいなかった。細胞の一片すらもがこの光熱の中を適応しようと学習を始め、カケラすら残って居なかったエネルギーの代用品を求め始める。
そして、見つけた。大量に周囲に存在している放射線だ。元々の餌とは少し違い、今までは餌として認識すらしてこなかった。しかし、生き延びる為にはこの膨大なエネルギーを利用しない手はない。
ありとあらゆる細胞が、全ての体内器官が、光熱と共に放射された放射能を吸収していく。初めは多少の量でも、慣れれば元々の餌と似た性質を持つ以上は幾らでも吸収出来る。また、熱エネルギーも多少なりとも代用品として吸収出来た。
やがて光熱の嵐が収まり、きのこ雲の発生源は溶けてマグマ化した大地と、蛋白質性の卵のような物体が二つ。
そしてその二つにヒビが入り、エネルギー満タンで全身の再生を完了させたガザラとラグラがその姿を表した。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっっ!!!」
ガザラは甲羅を赤く染め、ラグラは全身が灰色から黒に変わっていた。どちらも核兵器の炎と高濃度の放射線に適応し、更なる進化を遂げてしまったのだ。
『が、ガザラ!ガザラに、ラグラもです!!両者健在!!信じられません、全く、全く信じられません!!二体は生きております!!それどころか全くの無傷!!無傷であります!!』
海に浮かぶ巨大なクレーターと化した大戸島の中心に、二大怪獣がお互いに吠え合う。もはや人類には介入する余地など全く残されて居ない。
日本の首相官邸、アメリカのホワイトハウス。どちらも誰一人として言葉を発する事は無く、もはや地球の覇者は人類では無く、この戦いを制した二大怪獣のどちらかだと言う事実のみが残された。
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