第五章 その四
アメリカがここまでしてガザラとラグラをここで倒さなければならない理由は何だ。彼らは明らかに怪獣達を誘導可能な生物兵器として運用しようと目論んでいた。いきなりそれを全て投げ捨てるとは一体なんだ。
その時、官房長官と防衛大臣の二人が部下からある報告を受けて顔を顰める。そしてスクリーンの一部に地球防衛軍の幹部達が、知らぬ間にロリシカの諜報員達によって海難事故に見せかけて始末されてしまっていた事を知らされた。
「ドクターマトン、これは…………」
「恐らくロリシカとアメリカで密約が結ばれたんだろうね。ロリシカは今回の事件の主犯であり、目障りな地球防衛軍を始末。アメリカは怪獣達を誘導兵器として運用するのを諦め、責任を取って二体を駆除する」
「そんな勝手な…………!!」
余りにも身勝手な話だ。サンズ・オブ・トリニティを作ったことが間違いだったとしても、エコテロリストに襲わせて最悪の臨界事故を引き起こしたロリシカ。怪獣が生まれた事は完全な事故だったとしても、それを兵器利用する為に破壊を受けている日本の妨害に近い動きを続けたアメリカ。どちらも余りに身勝手過ぎる。
「つまりは東京都内に爆撃を実施するおつもりか?」
『既にB-2を三機向かわせた。爆撃予定地点は知らせる。既に居ないとは思うが、予定地点の避難誘導を要請する、以上だ』
「あっ!もしもし!?もしもし!?」
咄嗟に日本語が出てしまうくらいには焦る総理。しかし既に切られたホットラインは、日本側から掛け直してもアメリカ大統領が出る事は無いだろう。
「…………総理、爆撃を予定しているとの事ですが、もしも爆撃であの二体を倒せなければ…………」
「分かっている。次は東京に核を撃たせろと言ってくるだろうな」
「そんな…………」
「だがそうはさせん!コアの回収完了報告はまだか!?」
「あと少しです!!」
「完了次第、危険だがコアをヘリに乗せてガザラとラグラの近くまで向かわせろ!餌そのものの実物を見せられれば誘導されるはずだ!環境大臣!!今すぐキリシマプランの実行に適した無人島のピックアップを大至急!!都内での核兵器投下だけは何としてでも阻止しろ!!」
「了解!!」
総理の指示と、それぞれが出来る事を探して立ち上がった閣僚達や科学者達が一斉に動き出す。タイムリミットはあと僅かだが、やれる事はやらなければ。
「米軍の空爆予定地点が届きました!!一部、避難完了報告を受けていない地点が混じっています!!」
「現地部隊に緊急連絡!!」
「無人島のリスト、第一報上がりました!!」
「万が一がある。風向き次第で本土に放射性物質が向かわない島をまず選ぼう」
「気象庁に太平洋の風の向きを聞いてみます」
「可能なら自衛隊の部隊が展開できる地点があればベストだが、不可能なら条件から外してくれ」
「了解。現時点で一番条件に合うのは…………出ました!小笠原諸島、大戸島です!」
「大戸島か…………」
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