第五章 そのニ
ラグラの口内レールガンの連発を真正面から受けつつガザラは口を開き、高密度かつ超高温で気化しつつある液体を発射する。危機を感じたラグラはその場でジャンプして逃げるが、液体が地面に当たると同時に大爆発が起きて空中で体勢を崩してしまう。
ラグラが港区区役所を背中で潰しながら落下。大量の瓦礫と砂埃が舞い、ガザラはそのタイミングを逃さずにラグラ目掛けて歩き出す。近接戦闘の方が確実に倒せると言う判断なのだろう。
しかし瓦礫の山の中で倒れていたラグラは、接近するガザラの足音に反応して飛び起き、走り出す。動きの遅いガザラの背後に回り込んでその背中に全体重を込めた前脚を叩き込んだ。
ドーン、と激しい激突音が響く。ガザラは前のめりになって倒れるが、ラグラはその程度では逃さんとばかりに何度も何度も前脚で踏みつけた。
ドーン、ドーン、ドーン!かつてセントレアと陸自の戦車中隊を壊滅に追いやった超局所的地震攻撃だ。東京の街が軋みをあげ、ガザラも背中の甲羅にヒビが入る。
だが、ここでガザラは全身から強烈な冷気を発し始めた。それは脱皮攻撃の準備だったが、周りに水が無いためにラグラは気がつくのが一瞬遅れてしまった。
パーン!と風船が弾ける音にしては大きな音と共に大量の甲羅の破片がラグラを襲う。それだけでなく、甲羅が弾け飛ぶほどの衝撃を近距離で受けたラグラの巨体が浮かび上がった。
宙に浮いて逃げられないラグラの全身のあちこちに甲羅の破片が突き刺さる。そしてそのまま地面に落下し、のたうち回るラグラ。その間に起き上がったガザラの甲羅は、当然ながらまだまだ弱い。ここにさっきの口内レールガンの一撃でも加えられて仕舞えば一溜りもないと理解しているガザラは、甲羅を全力で硬質化させながら港区パークビルの影に隠れた。
そしてダメージを負ったラグラは、地面に傷口を擦り付ける事で刺さった甲羅の破片を抜ききり、全身の傷口を再生していく。しかし、こちらも再生している間は口内レールガンを発射出来ない。
起き上がったラグラは浜松町方面に走り出す。当然、ラグラより動きの遅いガザラは甲羅干しを終えてもすぐには追いつけない。
ズン、ズンとゆっくりとラグラの出す砂埃の後を追って歩き出すガザラ。しかし建物を蹴散らして回り込むラグラのスピードには全くついていけず、ビルを踏み崩しながら飛び上がって来たラグラが巨大な口を開けてガザラの左手の関節部に食らいついた。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ここに来て初めて苦悶の叫び声を上げるガザラ。ラグラは食らいついたが最後離すまいと顎に力を入れ、地面に着いた後ろ足を踏ん張った。このまま噛みちぎるつもりなのだろう。
だが、スピードでは圧倒されたガザラもパワーでは負けていない。むしろパワーの差を見せつける様に片手でラグラを持ち上げると、そのままラグラを第一京浜の交差点に投げつけた。
「ぐおぉぉん…………!」
外傷と言う再生可能なダメージではなく、衝撃と言う単純な痛みに呻き声をあげて口を離してしまうラグラ。ガザラはそこにハサミを振り下ろし、ラグラの腹部を切り裂いた。
再び苦悶の声を上げるラグラ。そこにもう一度ハサミを振り下ろそうとするガザラだったが、ピカッと光るとガザラの頭部にレールガンが被弾する。ラグラは再生よりも口内レールガンの発射を優先したのだ。
ガザラが怯んだ隙を突き、体勢を整えて距離を置くラグラ。
「きしゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっ!!」
どんどん瓦礫の山となっていく東京を尻目に、まだやれるぞとお互いに叫び合うガザラとラグラ。二大怪獣の決着はまだ時間がかかりそうだ。
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