第四章 激突
第四章 その一
ガザラとラグラが太平洋に姿を消してから一週間が経った。最大の被災地だった常滑市の復興の目処はまだ立たず、東京湾の封鎖は未だに解除される気配は無い。円の価値も低止まりのまま上がる気配は無いが、それでも日本人は生活していかなければならない。
太平洋に面していない都市に疎開しようにも、仕事は無くならない。怪獣に襲われたくは無いが、それでも東京を離れれば生活して行けない人達が大勢居る。
結果一週間足らずで東京を始めとした日本全国の都市の混乱も収まり、殆どの会社や企業が経営を再開した。
「日本の労働者はもう少し経営者に文句を言っていいと思うがね。怪獣に踏み潰されたく無いですと言ってストライキをしても許されるんじゃあ無いかな?」
「あり得ませんわ。日本人ですもの」
官邸の怪獣災害対策特別作戦室。ミサとドクターマトンがガザラとラグラの上陸時の避難計画会議で思わず呟くくらいには、東京の人口密集率は高いままだ。
何としてでもガザラとラグラを東京に上陸させる訳にはいかない。これが怪獣災害対策特別作戦室全員の共通認識だ。
「キリシマプランだが、やはりアメリカはあちらで確保しているコアの貸し出しは認めないとの事だ」
「そう、ですか…………」
外務大臣の苦々しい顔から想像はついたが、アメリカはキリシマプランの実行に対して否定的な態度を崩さないままだった。
ロリシカ諜報局のアンナと名乗る女性からもたらされた情報は既に官邸に共有している。USBメモリに入っていた情報を元に、各地の地球防衛軍の拠点へのガサ入れは確実な成果を上げた。しかし、まだ奪われたコアの行方は判明していない。
「いくら非常事態とは言え、我が国は国民の行動を必要以上に規制できない。東京都内への出戻りの中にテロリストが混じってしまえば都内侵入を阻止するのは難しい」
「何とか、道路だけでも封鎖して臨検させられませんか?」
「東京に戻ろうとする市民の足を止める事は、日本の復興速度の遅延に直結する。難しいな」
アメリカ政府がコアを利用して怪獣をアンダーコントロール化にある兵器として運用したがっており、日本に齎された甚大な被害はそのモデルケースとして扱われる。
ロリシカ諜報局経由なのでどこまで本当なのかは分からないし、日米の分断を狙った誤情報の可能性だってある。しかしアメリカ政府によるキリシマプランへの非協力的な態度は、怪獣兵器運用計画の説得力を与えてしまっていた。
「こうなってはあのエコテロリストのコアをこちらで確保して、そのコアでキリシマプランを実行するのが一番かもしれませんね。あくまでコアは返すつもりだったが、その途中でガザラとラグラが上陸した為に緊急避難としてキリシマプランを実行したと言う事にすれば…………」
ドクターマトンの発言に、その場の全員が渋々頷くしか無い。ギリギリの賭けではあるし、恐らく状況終了後にアメリカから相当文句を言われるだろう。しかし怪獣達を撃滅したと言う事実があればアメリカがアテにならなくても国際社会からの援助を引き出せるだろう。
「総理!たった今、東京都内で高い放射線量を観測されたと報告が!!」
「何!?」
その時、対策特別作戦室に飛び込んできた藤田の言葉でその場の全員が跳び上がらんばかりに驚いた。
「放射線の発生源は!?」
「首都高速、芝浦PAです!!」
「特殊部隊を向かわせろ!!一刻の早く回収し、怪獣の上陸を阻止しろ!!」
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