第三章 そのニ
時間はガザラとラグラが上陸した日の夜に遡る。
一人の青年が大型トラックの運転席で、沖合に停泊している大型の貨物船を双眼鏡で見つめていた。
「情報通りだな」
青年が呟くと、トラックの荷台の中で待機していた者たちが一斉に顔を上げる。男も居れば女も居て、日本人だけでなく国籍不明の白人や黒人も混じって居る。
「同志たち。我ら地球防衛軍の使命を果たす時が来たぞ」
荷台で待機していた大柄な白人男性が徐に口を開く。彼らは自称地球防衛軍。その存在を正確に称するなら、エコテロリスト集団だろう。
しかしただのエコテロリストにも限らず、本来なら銃火器の持ち込みの難しいはずの日本にはあるはずの無いバズーカやロケットランチャーなどの兵器すらこのトラックには積み込まれていた。
それだけではなく、このトラック以外にも洋上には武装を隠し持った小型クルーザーが幾つか待機しており、もはや正規軍の一個中隊と言っても過言では無い戦力を有していた。
彼らこそ、世界最大の原子力発電所を崩壊させた実行犯だった。
「我らは多大な犠牲を払い、あの忌まわしいサンズ・オブ・トリニティを潰した。だが、日本とアメリカは恥知らずにも原子炉を回収してあそこに保管して居る。あの罪の塊を我らで回収すれば、真の巨悪に天罰を下すことが出来るだろう!」
恍惚の表情で高らかに叫ぶテロリスト。両手を広げ、まるで宗教の教祖のようだった。当然、トラックの荷台の手下達は祈りを捧げる様に跪く。運転席の青年はそれを何処となく冷めた顔で見つめていた。
「既にこの星は使いを放った!あの二体は正に黙示録の獣だ!!我らも彼らに続くのだ!!」
「おおーっ!!」
「行くぞ!!原子炉を回収するのだ!!」
その夜、一隻の貨物船が日本海上で襲撃されると言う事件が起きた。しかしその事件そのものは何処にも報じられることは無かった。
そしてその光景を更に遠くから見つめていた人間が一人。帽子とサングラスで顔を隠した一人の女性がフウとため息を吐く。
「…………まさかここまで事態が悪化するなんて」
自動車に乗り、東京に向けて走り出しながら女性は頭痛を堪える様に真四角の一口大チョコ、チョコキューブを一粒口に入れた。サングラスを外し、帽子を脱ぐ。真っ白な肌に黒い髪を肩まで伸ばした謎の女性は車のアクセルを踏み込む。
状況は次のステージに移り始めていた。
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