第三章 爪痕と混乱

第三章 その一

【大怪獣は実在した!!】

【巨大怪獣日本を襲撃!!】

【常滑市に壊滅的被害!!】



「東京湾、および三河湾に出現した巨大生物による破壊から一夜明け、生物上陸により甚大な被害を受けた常滑市では、自衛隊による懸命な救助活動が進められています」


「各国首脳から哀悼の意と支援の表明が届きました。しかし中部国際空港の壊滅に伴い、国際救助隊及び国境なき医師団の常滑市到着は明日以降になる見通しです」


「急遽編成された国連の学術調査団が先程成田空港に降り立ち、被害を受けた東京湾アクアラインを視察しました」


「今回の巨大生物上陸に伴う被害総額は、現時点では一兆円を超えており、今後も増大すると予想されます」


「今回の巨大生物出現を、政府は予想していたんじゃ無いんですか!?」

「サンズ・オブ・トリニティの原子炉の海中投棄との関連性は!?」

「答えてください総理!!」

「どう責任を取るつもりですか!?」


「巨大生物出現と、それに伴う被害に関する全責任は、現政権にあることは間違いありません。一刻も早く辞職するべきでしょう」

「しかしあんな生物が実在して、しかも上陸して自衛隊の攻撃すら通じず暴れ回るなんて誰が予測できるって言うんです?仮に事前にその存在を把握していたとして、どう発表しろと?」

「それは…………しかし、責任ある立場の政治家としては今回の被害の責任を取るのが筋だと…………」



『怪獣って実在したんだ。ってか被害ヤバくね?』

『俺の知り合い、ちょうど直前までセントレアに居たんだよね。後一本乗る電車が遅かったら巻き込まれてたらしいわ』

『つーか、あんなデカい生き物がマジで建物踏み潰して迫ってきたら怖いわ。ニュースの映像見てチビるかと思った』

『自衛隊これ全然役に立ってねえじゃん』

『いや、ミサイル当たっても即座に再生とかズルすぎるだろ。相手が悪すぎるわ』

『どっちの怪獣が?』

『どっちもだろ。サメ?も、カニ?も。自衛隊の持ってる火力って、数はともかく質だと米軍と変わらないぞ』

『ってかサメ型怪獣も甲殻類型怪獣も言いにくくね?せっかく怪獣が出たんだから、名前付けようよ』

『いいね。まずはサメから安価で候補決めて投票な』



「日本に姿を現した二体の怪獣ですが、ネットやSNSでは怪獣の名前を決める動きがあるようです」

「不謹慎でしょう。これだからネットは…………」

「しかし名前が無いと一々サメ型怪獣と甲殻類型怪獣って呼ぶことになりますからね。不謹慎かもしれませんが、分かりやすい名前をつける必要はあると思いますよ」


「怪獣の名前決め選手権の結果がSNSのトレンド入りしました。常滑市に上陸したサメ型怪獣はラグラ。東京湾アクアラインを崩壊させた甲殻類型怪獣をガザラ。どちらも非公式の命名ですが、既に一般層にも広がりつつあるとのことで…………」



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