第二章 その二

「速報です。政府与党は先ほど臨時国会を召集し、自衛隊関連法の改正を強行採決しました。自衛隊関連法改正の強行採決の前例は無く、野党並びに一部与党議員からも反発の声が上がっています」


「旧来の自衛隊関連法では日本の安全保障の維持は不可能であり、今回の改正は日本国民の生活の安全を第一に考えて………」


「今回の改正案は、主に有害鳥獣駆除の項目に集中しています。自衛隊出動のハードルを下げ、また国民の生命または私有財産に被害が及ぶ可能性が出た場合は武器の無制限使用も可能にすると………」


「これは危険な兆候です。例え目的が有害鳥獣駆除であったとしても、自衛隊の武器の無制限使用のハードルを下げてしまうのは日本の軍事国家化を推進してしまうでしょう。周辺国家へ無用な心理的負担を………」


「有害鳥獣駆除の対象拡大は、いずれ時の政治家にとって不都合な声を有害鳥獣として認定出来てしまう可能性もあるのでは………」



「我々はー!有害鳥獣じゃなーい!!自衛隊改正法案はんたーい!!」



『なんか鳥の被り物したデモ隊がうろついてんだけどwwwwwww』

『バカじゃねえのあいつらwwwwwww』

『有害鳥獣って鳥だけじゃねえぞwwwwwww』

『まぁでもいきなりなのは間違い無いし、自衛隊関連法ってそんなホイホイ変えていいもんじゃ無いのは確かだよね』

『それはそう』

『ってかなんでこのタイミング?ゴジラでも見たかった?』



「お昼のニュースです。先ほど急遽、陸海空自衛隊と在日米軍が合同訓練を実施すると発表されました。自衛隊関連法改正案の突然の強行採決から僅か一日での前例の無い合同訓練の発表に、不安の声も………」



「………案の定、自衛隊関連法改正は大荒れですね」

「総理は色々言い訳はしてるが、明らかに異常な流れだ。合同訓練も含めて何か裏があるのは間違いないな」


 首相官邸に詰めていた記者団の一人がポツリと呟き、その先輩がメモ帳をペンで叩きながら同意する。


「やっぱりアメリカの要請ですかね?」

「当り前だろう。細かい事情は情報が降りてこなければ分かりっこないが、どんな事情があるにせよ日本政府を顎で使えるなんてのはアメリカしかない。有害鳥獣駆除を名目に、自衛隊を実戦投入させようって腹か」

「でも、今の日本の周辺で軍事衝突の可能性なんて………」

「そこはさっきも言った通り、官邸が情報を下ろしてくれなきゃ分かりっこないのさ」

「そこを調べるのが記者では?」

「映画の見すぎだよ」



「速報です。先ほど、東京湾にクジラとシャチの死骸が複数漂着したとのことです。どちらも激しく損壊しており、また未確認ですが微量の放射能が検出されたと言う証言も………」



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