プロローグ 02
バーン!
激しい爆発音と衝撃がサンズ・オブ・トリニティ中に響き渡った。当然、ミサ達も思わずその場でしゃがみ込んでしまう。
「何が起きたんだ?」
なんとか立ち上がったドクターマトンが懐から取り出したスマホで連絡を取ろうとする中、ミサは偶然付けたままにしてあったテレビの画面に視線が向く。
サンズ・オブ・トリニティの公開御披露目の密着レポートを中継していたそのテレビに映った人工島は、幾つかの黒い煙をモウモウと立ち上らせていた。おまけにその煙の元の辺りには炎が見え隠れしていて、今度はもう一度バーン、と衝撃が走る。と、一拍遅れてテレビの画面にも爆発が映った。
「シット、どこも連絡が付かない。けどこれは…………」
「テロよ!」
「最悪の事態だな。マスコミに紛れてたか、既に入り込まれてたか。どちらにせよ、俺たちはここを離れた方がいいな。避難艇に向かおう」
「この子達は…………」
「設備が生きてれば一年は自動で餌をやってくれるさ」
後ろ髪を引かれる思いで取り残される動物達を置き去りにして、ミサはドクターマトンに手を引かれて緊急用の非常通路を走っていく。時折ズーン、とまた音がして、爆発が起きたのは理解できた。しかし、ドクターマトンの言う通り、今は一刻も早く避難艇に向かわねば。
殺風景な非常通路の中を、金属の焼ける嫌な匂いと煙を避けるためにハンカチで口元を抑え姿勢を低くして走り続ける。が、道中でドクターマトンがふとミサの行く手を塞いだ。
「待った、テロリストだ」
非常通路を抜けて大広間に出られる直前のことだった。大広間を覗き込めば武装をしたテロリストが武装解除した警備員に銃を突きつけていて、咄嗟にドクターマトンがミサの目を塞ぐと同時に悲鳴と銃声が響き渡った。
こちらも悲鳴をあげそうになるのをグッと堪え、やがてドクターマトンの手が下がると大広間に転がる大量の死体を踏みつけるテロリストたちの興奮した声が聞こえてきた。
「奴ら、手当たり次第って感じだな」
「一体何者?」
「さて過激なエコロジストか、我々アメリカと日本がエネルギー問題で一歩先を行くのが許せない奴らか。どちらにせよロクな奴らじゃないさ」
テロリズムに走った時点で、どんな主張も正義も汚物に変わる。ドクターマトンはそう吐き捨てた。聞いたことのない言語で叫ぶテロリストの主張はミサには分からなかったが、少なくとも何の罪もない警備員たちの死体を踏みつける彼らに同調は出来ないだろう。
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