パーティー追放された少女と発電の力で最強目指します

ミステリー兎

発電=無限のエネルギー!


「単刀直入に言うけど君弱いから俺らのパーティー抜けてくれない?」


 俺が一週間前に入ったこのパーティーは実力主義だった。上位ランカーを目指すにはチーム力以前に個の力がそれぞれ高い必要があるのは分かるが少し厳しすぎると思っていたころ、この事件が起きた。


「はぁ? なんでよ! 私の神の雷サンダーボルトは稀少なスキルだからってそっちから誘ってきたんでしょ?」

「……はあ。サンダーボルトねぇ……。そのサンダーボルトのせいだよ!!」

「え?」

「お前のサンダーボルト()はサンダーボルト()なんだよ!」


 チームのリーダー、カザリと自称神の雷サンダーボルトの使い手、ライは最初の街にある居酒屋で他の客の目線を集めるほど二人の良い合いは注目の的になっていた。


「なあ? 稀少なスキル持ちってのはそこのユラみたいなのを言うんだぜ?」


 俺まで巻き込むなよ――


 ユラとは俺の名前で稀少なスキル持ちとは転移魔法のことを指しているのだろう。


「転移魔法は単体だと強くないって言いましたよね……リーダー。サンダーボルトは成長すればうちのエースになるんじゃないですか? まだ子供なんだしいろいろと成長の余地はあるでしょ。まあ今は確かに静電気ですけど!」

「ああ! お前も静電気って言ったなーー! それにいろいろ成長ってこの身長が低いこととか言ってるんのか? ……許さん」


 俺の手を掴んできた瞬間にライは静電気を流そうとしてきたのが予想できたのでそっくりそのまま返すように転移させてやった。


「ギャーーーー!! ピリッとキターーーー!!」


「な? お前も自分自身で分かったろ? ピリッとじゃ使えねえんだよ。成長したらまた誘ってやる。ついでに意地っ張りでガキっぽい態度も直ってたらなー」


 リーダーはそう言い残してライに手を振りながら他のメンバーを連れてダンジョンに行こうとしていた。

 ライはもう何も言い返さないまま「また独りか」と呟いてパーティー脱退のボタンを押した後、机に顔をスライムのように突っ伏していた。


「お前、この先どうするんだ? 言われた通り修行でもするのか?」

「……うん」

「スキルの洗練度や経験値は努力でどうとでもなるが魔力量ってのは成長しないんだ。有限の魔力でどう強くなるか考えるんだ」

「……サンダーボルトあるもん」

「だからそのサンダーボルトは魔力量が足りなくて強力じゃないだろ? 他の属性魔法を持ってないならトラップ技術とかヒールとか……」

「ああ!! もううるさい! うるさい! 慰めの一つくらいあってもいいだろ……。パーティー抜けたばっかだぞ……わたし……」


 いつも強気な態度や言葉は先ほどの言い合いで使い果たしたのか少しばかり弱音をこぼした。


 たしかにあのチームでこれからずっとってなると俺も精神的に良い心地はしないな。こいつだってダンジョン攻略を本気でやるためにパーティーに入ったわけだし。独りはいつだって寂しいよな……。


 俺ももっと感情的にならないとな――


「追放は何回目だ?」

「二度目」

「サンダーボルトにこだわる理由は?」

「かっこいいから」

「よし! なら俺ともう一度パーティー組まないか? 二人で」

「えっ!?」


 ライは突っ伏していた顔を勢い良くこちらに向ける。俺は先ほどのパーティーを抜けたことを証明して、新たなパーティーを自分で作ったのを顔の前に見せた。


「パーティー……ほんとに抜けたの?」

「そう見せてるだろ。入るのか? 入らないのか?」

「入る!! 強くなって必ず全員見返してやる!!」


 あのパーティーに嫌気がさして抜けた、こいつに同情してこんなことを言い出した。確かにそれも少しあるけど抜けた一番の根拠はそれじゃない。俺にはこいつを必ず強くさせる考えがあったからだ。


「それでどうやって強くなるの? さっきみたいに私のサンダーボルトをユラの転移魔法で敵にくらわすとか?」

「そう! よく分かったな。その静電気でしびれたところを狙って……、ってそんなわけないだろ!! ライの魔力量増やすに決まってるだろ?」

「で、でもさっきそんなの無理って言ってたじゃんかーー」


 ライはその場で小刻みにジャンプしながら俺にそう問い詰めてきた。


する」


「は?」


「自然エネルギーを生み出す」


「え?」


「転移魔法でライに渡す」


「ほうほう」


「じゃあこれから資材調達するぞ~~」


「…………………………」


 しばらくフリーズして動かないと思って手を顔の前に振っても反応がない。しばらくしてライは大きく息を吸う。俺はまた次の行動を予想できたため耳に手を当てる。




!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 とうとう俺たちは店から追い出されてしまった。これが俺とライがこの世界で最強を目指そうと誓った最初の日である。





 二年後――


 俺たちは全てのダンジョンの中心に位置する凪の平原ドレサビューにて風力発電システムを完成させた。ちなみにそれまでに稼いだコインやダンジョンで見つけた宝は全て土地代や建設代などで全て吹き飛んだ。だが、決して後悔はない。俺たちはついに目指していた最強の力を手に入れたのだ。


神の雷サンダーボルト!」



 俺の転移魔法で発電所から転移させた電力をライの電気属性魔法で操作する。転移魔法の使える範囲に制限はあるものの、およそ百万ボルトの電気魔法は上位ランカーになるには十分すぎる力だった。


 俺たちの旅はまだまだこれからだ――



(おわり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パーティー追放された少女と発電の力で最強目指します ミステリー兎 @myenjoy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説