36.ぼくが君の剣になる
レナートが、わずかに
「考えてみればわたくし、レナートさまのことを、あんまりわかっていませんの。お父さまに
「それでだいぶ、いっぱいじゃないかな」
「初めてお会いした時、告白に近い決心を後の話にしようって言われたのも、そのままですわ」
アーリーヤが押してくる。道理もある。
昨日はリヴィオに完全敗北して、今日はアーリーヤに全面降伏するようだ。そう考えると、
自分は結局、こういう人間には勝てない。そして結局、こういう人間が好きなのだ。
レナートは
「ぼくは……母さんと妹を、事故で亡くしてる。船の事故でさ。ぼくはその時、気を失ってて、父さんに
「え……?」
「ヒューネリクに
少し、目を
「ヴェルナスタ本国にいた頃、ザハールに
「レナートさま……」
「アーリーヤ。君の力、エングロッザの王族で
レナートの言葉に、アーリーヤが一度だけ
「ヒューネリクは君の殺し方を、父親から、命令に近い形で教えられたんだ。その記憶を、この王国の歴史と創造神の神話ごと、終わらせようとしている……ぼくには、そう見える。君を
「……っ!」
「一人で五つの
正しいとか間違っているとか、そんなことは関係ない。そんなことをアーリーヤが、考える必要はない。
レナートはアーリーヤの、大きく丸い
「他の方法がなくたって、それしかなくたって、文句の一つも言ってやらなきゃ気が済まない。そうだろう? えらそうに、本当のことはなにも言わない相手を、そのままにしちゃ駄目だ……ぼくにしてくれたように、ひっぱたいて、泣いて叫んで、力づくでもこっちの気持ちを、わからせてあげなきゃ駄目なんだ」
「レナートさま……わたくしは……」
「ぼくが、君の命を使うわけじゃない」
最初から、そうだった。
出会った時からアーリーヤは、走って、転んで、声をふりしぼって、小さな身体の全力で進んでいた。わかっていなかったのは、レナートだけだ。
「君が、君の命を、君の意思で使うなら……ぼくが君の剣になる。君の命を一緒に背負って、力になるよ。アーリーヤ」
アーリーヤの瞳が、こぼれ落ちそうなほどに、レナートを見つめた。
涙がゆれて、それでもはっきりと、レナートの視線を受け止めた。
レナートは、ほとんど無意識に、アーリーヤを胸に抱き寄せた。
最後の言葉を、少し迷った。それは、ヒューネリクの
「ヒューネリクは、今さら止まらないだろう……戦うことになる。それでも、最悪の終末だけは防いで見せる。ぼくたち、みんなで」
胸の中のアーリーヤのために、レナートは
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同じ
多数の
その横で、すぐに広がる
「こっちよ、ミスタ・サムライ」
波うつ
ベルグが、
「
「ええ。発動している
二人の後ろに、
「やあ、ベルグ。なんだか余計な面倒をかけたようで、悪かったね」
湖面の空中に浮かびながら、ヒューネリクが、久しぶりに会った友人を
ベルグが、鋼鉄の
「ヒューネリク王子、謝罪するのはこちらだ。アーリーヤ王女の国外退去を、まだ達成できていない。引き続き任務を……」
「あはははは! それはもう良いよ。ぼくにも、いろいろ計算違いがあったけど、どうにかなったからさ。ああ、ついでに、今のぼくは国王だよ」
ヒューネリクの
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