35.たくさんいるじゃねえか
ちょうどそこへ、ザハールとルカも戻って来た。
二人も、かなりの
「お待たせしました。そこの家を宿に借り受けましたので、今日は、夜まで遊んでいただいても結構ですよ」
「あれ? 王さまのところに戻らねえの?」
「そうか。おまえたちは特務局で、俺たちみたいな、専門の情報部じゃないからな」
リヴィオの何気ない質問に、ルカが、思い出したようにつぶやく。遠回しな答えを、ザハールが
「
ヒューネリクに対して、今、こちら側にいる全員で意見を合わせたい、ということだ。組み合わせに思うところはともかく、リヴィオも表情を改めた。
「王さまの
「それはもう、どこまでの危険性を踏まえるか、ですね。私たちも、これだけの王都住民に
ザハールが、レナートに向き直る。
「レナートくん。あなたが考えている構図は、恐らく正しいです。五つの
沈みかけている
幻想的な地上の星空の中で、楽園は、いつ果てるとも知れない酒食と音楽と踊りに酔いしれていた。
「王国の近代化をお題目にしていても、その実、彼は王国にも
レナートは、ザハールの目を見た。それで
ザハールが、嬉しそうに
「以上が、私たちの持っている最後の情報です。これで
「……どうしてそう、言うことも態度も、
「誤解があります」
心外そうに
「友人として、誠意を示したいのですよ……私の立場なりに、ね。それだけです」
レナートとザハールが、まったく同時に、肩をすくめた。
リヴィオとルカが、やはり同時に、ため息をつく。ひねくれた会話はともかく、なんだか二人が考えていることの、大筋の合意はできた。そういうことらしかった。
レナート、ザハール、リヴィオ、ルカ、全員の視線がニジュカに向いた。ニジュカは、あくび混じりに親指を立てた。
「大体わかった、任せとけ。それはそれとして、若いの……王女さん、そろそろ引っぱり戻した方が良いと思うぞ」
酔っぱらいからの、意外で余計な世話焼きに、レナートが
「ニジュカさんまで、そういうこと言います? お
「いや、まあ、な」
「家族も、育った国も、命も……なくすかも知れないんです。今だけの楽園なら、せめて、楽しませてあげましょうよ」
それが本心の言葉だと、少なくとも言ったレナート本人は思った。だが、ニジュカは頭をかいて、妙に歯切れが悪かった。
「んー、おまえら白色人種には、確かに、わかり
「……なんですか?」
「ほら、こういう祭りみたいな日の夜は、みんな盛り上がってるだろ? 男も女も酒を飲んで、歌って踊って、子供らが遊び疲れて寝ちまった後も、な。フラガナは暑いから着てるもんだって薄いし、若い連中がそこら中に集まって、暗い時間に楽しく一緒で、って、そりゃおまえ……」
一呼吸の
レナートは、もう当てずっぽうに飛び出した。後ろでリヴィオが、大声で笑っていたが、かまっていられなかった。
********************
宿に借りた家の、屋上だ。石造りの壁に木の
昨夜、リヴィオとニジュカ、ザハールとルカも一緒に、すべての情報を共有した。
今は一人で、屋上に座って
物音がして、背後の
「大丈夫……でもなさそうだね。調子に乗って、
「こ、これくらい、婦女子の
目がしょぼしょぼと、口がもごもごと動いて、ひどい顔がますますひどくなる。
レナートが大慌てで回収した時、アーリーヤは、大勢の男女の輪で一斉に
レナートは苦笑して、
少しだけ、お互いの
「なにか……話して欲しいですの」
アーリーヤが、ぽつりとつぶやいた。
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