29.だいぶ間違えているね
背が高く、黒い肌に
その笑顔を見て、アーリーヤが駆け寄り、抱きついた。
「お兄さま……! 御無事で……っ!」
「おや。なんだか見違えたね、アーリーヤ」
ザハールと似たり寄ったりの
「御安心くださいまし……アーリーヤが、お救いに上がりましたの!」
「うん、だいぶ間違えているね。とりあえず、そちらのお客さまも一緒に、
落ち着いて、そして奇妙に陽気なヒューネリクの調子に、レナートとリヴィオ、ニジュカが顔を見合わせる。グリゼルダは、警戒の表情を
全員が頂上広場に降りて、
アーリーヤが、ヒューネリクの胸から、顔を上げた。
「あの、お兄さま……お父さまや、他の方々は……」
「父上と
「え……?」
「他のみんなは、家でおとなしくさせてる。邪魔して欲しくなかったから、これも仕方ないんだ。でないと
すらすらと出てくる言葉に、そ知らぬふりを失敗して、ルカが
「おい! 俺たちを悪党みたいに言うな! 今の時点で、人を殺したのはおまえと、おまえの
「もちろんだよ。だから
「お察しします、ヒューネリク。それはそれとして、実は私たちも、いろいろあって空腹です。
「ありがとう。がんばってくれてるザハールとルカのために、また新しいロセリア料理に挑戦したんだ。喜んでくれると嬉しいなあ」
「新しいもくそもあるか! おまえの出してきた物がロセリア料理だったことなんか、一度もねえっ!」
レナートとニジュカ、リヴィオとグリゼルダが、もう一度、顔を見合わせた。
********************
ヴェルナスタ共和国の海外領土、フラガナ大陸の
変わった物では、
リヴィオの後ろでグリゼルダが、厳しい視線を
無言で、
ヒューネリクが大広間の奥側、向かって右にザハール、ルカと並んで、リヴィオ、レナート、ニジュカの順、そしてアーリーヤがヒューネリクの左に戻って、大きく円になっている。レナートはヒューネリクと、ほとんど正面に向かい合っていた。
「それじゃあ、改めまして。ぼくがエングロッザ王国の現国王、ヒューネリクです。妹のアーリーヤがお世話になってしまって、お礼を言います。ありがとう! ザハールとルカからも、聞いているよ。君がヴェルナスタ共和国の……」
「ガレアッツオ=フォスカリ
「肩書きはないぞ。あるかも知れないけど、覚えてないからな。まあ、お使いだ」
ニジュカの言いように、ヒューネリクも愉快そうに笑った。
「光栄だなあ。東フラガナ人民共和国と言えば、世界大戦の最中に植民地から独立した、ぼくたち黒色人種の希望の星だよ!」
「こっちこそ、人類最古の王国に招かれて光栄だ。存続を知っていたら、もっと早く声をかけていたよ」
「いやあ、せいぜいこの淡水湖の
探検に来た、さすがの白色人種のザハールが口をはさむ。
「この辺は
「それでおっさんたち、
「まったくだ! さっさと仕事を片づけて、文明社会に帰りたいぜ!」
リヴィオとルカが、奇妙に同調する。ヒューネリクがルカ、リヴィオ、そしてリヴィオの後ろのグリゼルダを、順に見た。グリゼルダににらみ返されて、おどけるように肩をすくめて、また視線をルカに戻す。
「こんなにお持て成ししてるのに、ルカは冷たいなあ。ぼくたち、友達だよね?」
「ちが……ッ」
「もちろんです、ヒューネリク。ロセリア連邦はエングロッザ王国の
ルカの口に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます