16.君たちだけが友達だよ
密林の都市国家、エングロッザ王国の王都ジンバフィル中央にある宮殿は、明るい色の
同じ構造の防壁が宮殿と都市全体を二重に囲んで、外敵の侵入を
昼日中に大勢の黒色人種の兵士、いや、近代的な見方をすればせいぜい狩人の大集団が、槍と盾と弓矢を振り回して叫んでいた。
彼らがにらむ視線の先、宮殿の上からはるか高く、黒々と
それなりにたくましい身体に、ロセリア
「
「御主人さまが……見知らぬ
「いや、無意味に殺さないのは普通だろ。優しくねえよ」
「半分くらい、当ててよろしいでしょうか……」
「
ルカが、ため息をついて手を振ると、
眼下の狩人もどきたちが射かけてきた矢、投げかけてきた槍を、からめとり、
すぐに
チェチーリヤが上目使いのまま、すねるように
宮殿を囲む外壁の間を、街路を、兵士たちの
なすすべもない兵士たちが、悲鳴を上げて逃げ
兵士たちの手から、ほとんど同時に、槍も弓も壊れて落ちる。大勢の中、
男の
両腕に、無造作に持った二振りの小剣が、
「さて。
ルカと同じことを、ザハールが
認識ごと
「まあ、これくらいは許容範囲でしょう」
ザハールが、残った兵士たちを振り向いた直後、
その上にふわりと、ルカが降り立つ。二人のロセリア
宮殿の上にいた
本当に人影だった。
規律も正しく、ぞろぞろと出てきた
最後に悠々と、のんきな笑顔が、ザハールとルカに歩み寄った。
「お疲れさま! ありがとう、上々だよ。
背が高く、黒い肌に
親しげに両手を広げたヒューネリクを、ルカが、鼻にしわを集めてにらんだ。
「そりゃあ、王さまやってた兄貴を殺して、成り代わったくそ生意気な
「国家元首って、孤独だよね。君たちだけが友達だよ」
「誰が友達だ!」
「光栄です、ヒューネリク」
しゃあしゃあと返して、小剣を納めつつ、ザハールが一礼する。ヒューネリクは変わらず、のんきな笑顔だった。
「お腹が減ったろう? ぼくもぺこぺこだよ。少し早いけど、昼食にしよう」
「……
兵士を連れて行く
「効率と動きの正確さは、まだ改善の余地があるかなあ。土木作業で練習してるんだ。湖まで
「楽園都市……
「まかせてよ、がんばるからさ。アーリーヤのことも、どうするか考えてみた。昼食ついでに、相談したいな」
「うかがいましょう」
「ありがとう、ザハール」
ヒューネリクが晴れやかに、
ザハールとルカを先導して歩き出す。二人も、それぞれの表情で従った。そこで、ふと、ヒューネリクが歩きながら
「あ。それから、相談と言えばね、ルカ」
「なんだよ……?」
「牛と
「……違う動物だ」
「
「違う酒だ」
「野菜と
「おい! せめて料理は、まともな物を食わせろ!
「
「熱量が補充できれば、おおむね問題ありません」
「ザハール! おまえ、だから余計なことを言うなって言っただろ! 俺が食いたいのはロセリア料理で、こんな地の果ての実験料理じゃねえ!」
「ロセリア料理だって、そんな
「大丈夫だよ、ルカ。ぼくも責任を持って、一緒に食べるから」
「その
逃げようとしたルカの
すぐにまた、他の
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