9.なんの祭りなんだ?
星明かりに見下ろす熱帯の密林は、黒々と果てしない海のようだった。
密林の
「ああ、くそ……っ! 牛肉の
「誤解があります。私は誠心誠意、あなたに
ルカが、茶色のロセリア軍服の肩をいからせ、たてがみのような
「また空腹になったのなら、どうぞ休んでください。私が食料を
「
「そう言われても、私の
「口に入れば良いってもんじゃねえっ!」
声も裏返るルカの真正面で、ルカと向き合い、白髪紅眼の美女が正座していた。黒い
「ああ……御主人さまが、私のせいで……こんなにやつれて……。嬉しい……ぞくぞくします……」
「……その気合いで、速度を上げてくれ。チェチーリヤ……」
前後の
港町インパネイラに近い平野部で、ヴェルナスタ共和国の特務局<
エングロッザ王国の外に問題が広がってしまったのは失態だが、それ以上に、事態は急変していた。一刻も早くエングロッザ王国の王都ジンバフィルに戻り、状況を
夜を
ルカの、うなだれた視界の先、黒々と果てしない密林の地平線に、星のような明かりが見えた。
「おい、ザハール……あれは、なんだ?」
湖からの
エングロッザ王国の王都ジンバフィルは、険しい山脈のほぼ真下、
淡水湖の豊かな
だが、そこまでのはずだった。
列強の先進諸国、白色人種の実現した科学文明に比べれば、外界から
その王都ジンバフィルが、星空の下に
正確にはジンバフィルの北辺、山脈に連なる
途方もない規模の、
「やりやがったな、あの野郎……っ!」
「口が悪いですよ、ルカ」
「
「誤解があります。私も、これまでにないほど動揺しています」
「だったら、わかるように言え!」
無駄口をたたく二人に、チェチーリヤが、困ったような、慌てたような顔をする。
ルカがため息をついて、チェチーリヤの白髪を軽くなでた。
「とにかく、あのてっぺんに行くぞ。話を聞かなきゃ、始まらねえ」
「私が一人で行きます。あなたは万が一に備えて、周辺で……」
「ふざけんな。あれから飲まず食わずのおまえに、任せられるか」
言い捨てるルカに、ザハールが苦笑した。
ルカが足を開いて組み直し、その
石造りではない、鉱物の鋭利な結晶がそのまま構成したような、巨塔だった。半透明の表層下に、血管じみた電気発光帯が走っている。内部には空洞があるのか、窓らしい無数の穴と、てっぺんの近くには
その張り出しに、男が一人、立っていた。
背が高く、黒い肌に
「お帰り、ザハール、ルカ。
ヒューネリクを見るチェチーリヤの紅眼に、
「笑えないな、王子さま。俺たちが留守にしてる間に、これは一体、なんの祭りなんだ?」
「もう王子じゃないよ。そうだね、
「父王陛下が、
ルカの
ザハールの問いかけに、ヒューネリクが肩をすくめた。
「言葉遊びは好きじゃない。殺したよ。君たちが欲しがっていた王族の秘宝、輝ける五つの
穏やかな笑顔のまま、エングロッザ王国ヒューネリク新国王の
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