8.肉体的接触は遠慮しよう
落ちた雑誌を、オズロデットが何気なく拾って、メルセデスに手渡した。
「ま、こんな風に
からかうように手を振って、オズロデットが消えた。手元の台に雑誌を置き直して、メルセデスがまた脚を組み替える。
「本題に入るわ。あなたは
「黙秘すると言ったはずだ」
「あたしも言ったはずだけど、それはもう、黙秘じゃないわ。ミスタ・オチムシャ」
メルセデスが、服と同じく鮮やかに赤い
「あたしも同業、アルメキア共和国陸軍の特務部隊よ。ロセリアのコミンテルンは敵だわ。手を組みましょう。情報の共有、目標や作戦行動の細かいすり合わせは、難しくないと思うわ」
「それが、自分を
「あなた、よく
「積極的に
「待って待って。そりゃ、途中経過は見殺しでも、ほとんど死体になってたのを拾って
食い下がるメルセデスの言い分は、一理ある。
ベルグとしても、思い返してみればロセリア連邦陸軍の特殊情報部コミンテルンの二人に
メルセデスは、アルメキア共和国陸軍の特務部隊を自称した。
アルメキア共和国は、このフラガナ大陸や、北辺にロセリア連邦のあるオルレア大陸から
ロセリア連邦は、伝統的な帝国制を貴族などの支配階級もろとも自国内の革命で破壊し、現在は共産主義という政治体制を
世界大戦が終わり、
革命とは現体制の全否定と破壊の暴力であり、すわ
ベルグの所属も、アルメキア共和国も、この区分なら資本主義の陣営に属している。部分的に協調できる可能性はあった。
なにより、ベルグ自身が生きている以上、ベルグの任務も継続している。今後また、あの二人と争うことを想定すれば、単独行動の戦力不足は明らかだった。おそらくメルセデスの方も、ベルグたちの戦闘を観察して、
思考の経緯は長かったが、
「理解した、メルセデス。
ベルグは、
「そうこなくっちゃ! 恩は身体で返すものよ、ミスタ・サムライ!」
称号が格上げになった。メルセデスも
ベルグも握手の習慣は知っていたが、自国の文化圏で、一般的ではなかった。
「肉体的接触は
「あら、残念。ばれるわけでもないでしょうに、
「メルセデスは
「あたしは趣味の幅が広いのよ。人生を楽しむ
気を悪くするでもなく、メルセデスが
正面からは、肩と胸元が大きくはだけて見えたが、背中もかなりの肌面積が露出していた。
肩から続けてむき出しの、白く細い両腕が、
メルセデスの斜め後ろから、外を見る。
異常な、という評価は、やや主観的だった。
男たちは軍隊、ましてメルセデスが自称した特務部隊という
それぞれ入念に手入れされたであろう髪と顔立ち、メルセデスの
中でも
「
ベルグは、しばらく言葉を探してから、あきらめて斜め前のメルセデスを見た。メルセデスは腰に手を当てて、満足そうな鼻息だった。
「あたしは趣味に生きてるの。趣味で死ぬなら、それも
「その
「ええ。あたしの
メルセデスの声は、歌うようだった。ベルグは、メルセデスに見えないように苦笑した。あきれたのか、
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