10.これからのことを話し合おうよ
ヒューネリクが、改めてザハール、ルカ、チェチーリヤを順に見て、ほくそ笑んだ。
「アーリーヤは、うまく逃げられたみたいだね。いろいろ手は貸したけど、それにしたって君たちを出し抜くなんて、あのフェルネラントの男、有能だなあ」
「私は言葉遊びが好きですよ、ヒューネリク。彼女は現在、信頼できる友人に預けて、安全な場所に保護しています。その一件も含めて、あなたに確認したいことが多く、こうして戻ってきたというわけです」
「作業を急いで良かったよ。ぎりぎりだった」
ヒューネリクとザハールが、お互い、からかうような視線を交わす。
「可愛い妹に、広い世界を知って欲しくてね。ちょうど邪魔だったことだし、
「それは、まあ……そうでしょうね」
「
ヒューネリクの背後、巨塔の内部に満ちる電気の光から
ヒューネリクの
「
「
「いやあ、なんの説明もない見渡す限りの書物庫に放り込まれた、みたいな感じかな。見よう見まねで、こんな物を作ってみたけど、我ながら、ちょっと
ゆらいだ
「同感だな、いかれた王さまもどき。
「まだ話の途中ですよ、ルカ」
「もう終わってるだろうが。国を守って侵略者と戦争する、見上げた独裁者さまだ。革命で打倒して差し上げる、大義名分のお手本だ」
「ん? ああ、ごめん。それをやろうとしてたのは父だから、ぼくが、君たちの革命を横取りしちゃったことになるのかな?」
ザハールとルカ、そしてチェチーリヤの
「科学とか近代化とか、これだけ出遅れて、世界中から孤立してやっていけないことくらいわかるよ。君たちは個人的に好きだし、革命でも共産主義でも、いっそよろしくお願いしたいな。どうだろう? これからのことを話し合おうよ」
「今さらだ。それならなんで、俺たちに、こんな
「ぼくも一応、王族だからね。なんの武器もなしに話し合いをしてもらえるとは、思ってないよ。国と国なら、それが常識だろう?」
ヒューネリクの言葉が終わる前に、背後の
「五つも取り込んだから、だろうね。混ざり合ってて、意思も名前も、姿もない。でも多分、いろいろなことができるよ。ぼくたちが戦うのは、きっと、お互いに利益がないと思うんだ」
ヒューネリクが、また穏やかに笑った。
ルカが無言で上げようとした左腕を、ザハールが押さえた。
「話し合いには双方の利益がある、ということですね」
「そう、それだよ! 君が好きだって言うから、がんばって言葉遊びをしたんだ。わかってくれて嬉しいな」
次の瞬間、もう
「ぼくは父ほど真面目な国王じゃない。他人にも国民にも、あんまり興味はないけれど……革命って言うのは、王族貴族を皆殺しにするんだろう? さすがにそこは、少し
「無責任なもんだな、王さまもどき」
「自分が死んだ先のことまで、責任は持てないよ」
ルカの刺すような視線に、ヒューネリクがひらひらと
「想像がつくだろうけれど、ぼくのこの状態は、やっぱり無理があるみたいだ。三年か、長くても五年かな。話し合いがまとまるなら、君たちの前でおとなしく死んで、五つの
「アーリーヤ王女の
「……あの子が素直に、君たちの役に立つとは思えないな。放っておいてあげてよ」
ザハールを見るヒューネリクの目が、わずかに細くなった。それを確認して、ザハールが少し
「難しいですね」
「困ったな。正直に言うけれど、こっちに交渉材料は、ほとんどないよ?」
「私も正直に言って、先ほどの言葉遊びを
「……んん?」
ヒューネリクが、
ルカがため息をついて、右腕を軽く振った。チェチーリヤが不満そうに
今や
「そう言えば、伝言を頼まれてたな。ええと……必ず、こんな怪しげな異人どもから、お兄さまをお救い申し上げます、だったな。あの
「
「あれ……? どうして、そうなった……?」
ルカとザハールが顔を見合わせる。ヒューネリクが、呆然と
「そりゃ、そそっかしいところのあった子だけど……そんなとんとん
「聞きたいのはこっちだ!」
「他の条件は承知しました。こちらも交渉成立ですので、改めて、これからの対策方針を話し合いましょう」
ザハールが
「とりあえず、牛肉の
「余計なこと言うな! 絶対、無理に寄せた、怪しい
「ああ、うん……数日、待ってくれるかな。
ヒューネリクが、まだ少し呆然と、半笑いになる。ザハールが
エングロッザ王国の王都ジンバフィルは、
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