4.誤解があります
平野部の
大断崖から続く森と、港町インパネイラの間の、なんとかそれなりの木立ちと茂みの
砂鉄の翼を持つ
「な……ななな、なんですの、あれは……っ? あれが、その……
「ん。まあ、ああいう非常識を全部まとめて、
「ざ、ざっくりしてますのね……」
「細かく考えても、結局は千差万別で、あんまり意味がないんだってさ」
レナートが肩をすくめる。
「もう少ししたら、どっちかが死ぬか、お腹を
「ものすごい文脈の飛躍ですわ……ベルグさまもそうでしたが、異国の殿方は、普通にそういうものなんですの……?」
あきれ返るアーリーヤを、レナートが、ふと見つめた。
「
「
「名前を当てはめると、なんとなくわかったような気分になるよね」
「同感ですわ」
「レナート=フォスカリ」
「え?」
「ぼくの名前。君の名前は、
レナートの銀髪と青い目、中性的な整った顔立ちに見つめられて、アーリーヤがうっすらと
「レナートさま、アーリーヤと呼んでくださいまし」
「呼んでるよ?」
「婦女子が殿方とわかり合うには、それに
「君も結構、飛躍するね」
レナートが
「あの大騒ぎみたいに、周りのものを取り込んで使う場合は別だけど、グリゼルダ……
「それは……ええ。その、やんごとなき身ではありますが」
「自分で言うかな。そうじゃなくて、
「レナートさまと同じように、とも、おっしゃられてましたわね。よくわかりませんが、嬉しいですわ」
「……なんでそういうところだけ、しっかり出てくるんだか」
進むような進まないような話に、レナートが渋面になる。いいかげん、鋼鉄の巨神像と
「アーリーヤ、君はどこの何者なんだ? なぜフラガナ大陸で、北の果てのロセリア連邦の軍人なんかに追われてる? この状況と君自身に、
「まったくです。私たちにもよくわからなくて、困っているんですよ」
レナートの声に、すぐ近くから、別の男の声が重なった。
一呼吸にも満たない間に、レナートが動く。紺色の官服の
ほとんど顔の真横で発砲されたアーリーヤが、火花と音に悲鳴を上げるより早く、レナートに手を引かれて走らされていた。
「思い切りが良くなりましたね。あの鋼鉄使いの少年が、あなたを成長させたのでしょうか……とても
最初の声が聞こえた方向と、全然違う場所に、声の男が立っていた。
ルカと同じくらいの年齢だ。
「あんたが言うと、いかがわしく聞こえるよ……っ!」
「誤解があります。私は、どちらかと言えば奥手です」
軽く肩をすくめて、男の目線がレナートを追う。レナートが手近な木に、アーリーヤをぶつける勢いで押しつける。さらに自分の背中を押しつけて、木と茂みのない方向へ拳銃を向け、残りの三発を立て続けに撃った。
すぐ
「あ、あの変態美人とは、お知り合いですの……っ?」
「変態なのは知ってるんだ?」
「お兄さまに色目を使ってましたわ!」
「誤解があります」
アーリーヤをはさんだ木の逆側から、反論があった。
レナートは即座にアーリーヤを、
「レ、レナートさま! 少しくらい強引なのは、殿方の
「ごめん。そんな余裕ない」
レナートも茂みに身を沈めて、銃口を向ける位置を、素早く見定める。
「あの変態美人の
「ザハール=ジェミヤノヴィチ=ズダカーエフです。ロセリアの人名は長いので無理も言えませんが、せめてザハールとだけ覚えてください」
今度はやや遠く、撃つには難しい辺りから、不平が聞こえた。
「それから、お見事な対応です。私の
「ヴェルナスタ本国が、世話になったからね。少しは考えるさ」
鼻を鳴らしたレナートに、ザハールは苦笑したようだった。
「もちろん、それらを
「それはどうも」
「話し合いをしましょう。最初に言った通り、この状況には、私たちにもわからないことが多いのですが……その子の
「……追いかけながら、
「恥ずかしながら、その子を
しゃあしゃあと言うザハールに、今度はレナートが苦笑する番だった。
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