04


side:M





「篠宮社長!このメロン、すっごく美味し!!」


「いやもうお前が食ってるのはメロンじゃなくて酒だろ」



篠宮社長がなんとメロンを一玉頼んでくれていたみたいで、お席についてワインを開けた後、半分にして種を除けたメロンが出てきた。


何をするんだろうって思っていると、メロンを器にするように種を除けて窪んだ部分にクラッシュアイスとブランデーを入れ、実をほぐしていく社長。

社長曰くバブルのころに流行った飲み方だそうだ。


これは、絶対美味しい!!!

そう思って一口頂くと、予想通り!

いつも飲んでいるブランデーが、メロンの味になっている、というよりはメロンにアルコールが入ってる感じ?

どう説明していいかわからいけど、一つ言えるのはめちゃくちゃ美味しいってこと。


スプーンですくって実とブランデーを一緒に食べる。

何とも言えない美味しさにパクパクと口に運ぶ手が止まらない。



「お前……晩飯あれだけ食ってよく入るな」


「甘いものは別腹っていうじゃないですか」


「別腹にしても限度があるだろうが……メロン半玉1人でぺろっといくかぁ?」


「私ならいけちゃうんですよー」



メロンを頬張る私を見て呆れた顔というより、若干引いているような顔をしている。

そんな顔しなくてもいいのに!

大好きなメロンとお酒を一緒に食べれるなんて本当に幸せだし別腹になるにきまってるじゃない。

流石に、今からケーキ食べろって言われたらしんどいけど。



「おい、オーナー来たんじゃないか?」


「ふぇ?」



メロンを口に運びながら、篠宮社長がみている方を見ると店長が慌てて外へと出て行った。



「オーナー来ましたね!早くこれ食べ終わらなきゃ!!」


「お前……それ食っていく気か」


「もちろんですよ!食べて、ちゃんとお酒も全部頂いてから行きますよ~」


「まじでお前の胃袋どうなってんだ」


「えー、普通ですよ!普通!」


「いや、普通じゃねぇだろ。酒の量も」



私的には普通なんだけどなぁ。

一応酔っぱらっているし!

見ているのは篠宮社長だけだと思い、メロンを持ちそのまま口をつけて溜まっている果汁とお酒を飲もうとしていると背後からオーナーの声がした。



「篠宮社長、ご無沙汰してます」


「おお、久しぶりだな。……相変わらず顔怖いなお前」


「生まれつきなんで」


「そんな人相悪赤ん坊が出てきたらお袋さん驚くだろな」



そんなやり取りをしている、2人はなぜか私を見ながら話している。

最初のご無沙汰~の挨拶はお互いに顔を見合わせていたのにだ。

ごくりと、口に入っていたお酒を飲みこんでオーナーに視線を向ける。



「……オーナーお疲れ様です」


「お前……いくらなんでもそれはないと思うぞ」


「……だよな」


「……篠宮社長の前だからちょっと気が抜けちゃってました」


「また、お前は……」



てへっと笑いかけると、呆れたような声を出しながらも嬉しそうな顔をする篠宮社長。

男の人って、割とこういう言葉に弱いよね。


そんな私たちのやり取りに呆れたような視線を投げかけているオーナー。

いや、相変わらず顔怖いな。

呆れているような視線だと私は思っているんだけど、実際は違うんじゃないかってくらい怖い顔してる。



「オーナーは今日はお一人なんですか?」


「取引先の社長の息子が来てる。お前と同じくらいの年だ」


「わかりました。とりあえず、これ食べたら行きますね!今日は私と新人ちゃんがつくそうです」


「……篠宮社長、コイツ借りますね」


「おうおう、好きなだけ連れてけ。今日は早い時間から相手してもらってるからな」



メロンを食べてから行くと言った私に一瞬、生暖かい視線を送られた気がした。

きっと、気のせいだと思いたい。というか、そんな視線になっても顔は怖いある意味すごいと思う。

篠宮社長は、私の言葉はフル無視をしてボーイの子を呼んでいる。

そんな社長に、すみませんと声をかけると、相手を待たせているのでと言いオーナーは奥にあるビップルームへと入っていった。


社長がボーイの子にお会計をお願いしている間に、あと少し残っていた果汁とお酒を飲みほしてしまう。



「ふぅ~、おいしかった!篠宮社長、ご馳走様です~」


「お前、本当に間食したな」


「まだ残り半分もいけそうですよ!」


「……腹壊すぞ」


「大丈夫ですよ!たぶん!」


「はぁ……また、好きなだけ食べさせてやるから、オーナーのとこ行ってこい」


「わーい!!楽しみにしてますね!!あと、お見送りはちゃんとしてから行きますよ」



そう伝えて、お会計が終わって立ち上がった篠宮社長と一緒に店の入り口までいく。

いつの間にタクシーを呼んでいたのか、店の前にタクシーが止まっていた。社長は次回の同伴の約束をすると止まっていたタクシーに乗りこんで帰っていった。


社長をお見送りして、店に戻るとちょうどいいタイミングで新人ちゃんと店長が待っていた。

まだ、誰もオーナーのところについてなかったのか!

結構待たせちゃってるけど、大丈夫かな。

一緒に来てるの取引先の社長の息子さんって言ってたけど……。



「真白、篠宮社長のお見送りはすんだか?」


「さっき終わりましたよ。ていうか、オーナーのところ誰もついてない状況だと思うんですけど大丈夫なんです?」


「新人の愛華を一人でつけれないだろ」


「私はぁ、大丈夫って言ったんですけどね!真白ちゃんができるなら私だってできるもの!」



焦っているオーナーになら私がつくまで美咲さんに行ってもらえばよかったじゃないですかと言おうとしたら、私より先に新人ちゃんが口を開いた。


何だろう。めっちゃこの子に敵視されてる気がするんだけど?

てか、私先輩な上にこの子より年上なんだけどなぁ。



「ここで、話してる暇なんてないですよね。早くいきましょう」


「あ、ああ、そうだな。よろしく頼むな、真白」


「は~い」



新人ちゃんの言葉はフル無視をしてビップルームへと急ぐ。

店長は、そんな私に若干びっくりしているが今はそれどころじゃない状況だからか気にすることなく私についてくる。



「ちょっと!!」



そんな私に、新人ちゃんはムスッとした顔をして言い返そうとするが彼女が文句を口にするより先にビップルームの前へと着いた。


コンコンとドアをノックして扉を開く。



「失礼いたします。大変お待たせしてしまい申し訳ありません」



開けた部屋の中は、何とも言えない冷たい空気が漂っていた。

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