幽霊

 物置代わりになっている離れの一室に行くと、時おり老婆が老爺の首を絞めている場面に遭遇する。どちらも幽霊だが、屋敷でそんな惨劇が起きた記録はない。使われている木材の残留思念だろうかと家主のヒカルは首を傾げていたところ、近くの集落に行った時、知人の大井家に飾られていた写真で離れに現れる彼らは彼の祖父母だと知った。

 それとなく探りを入れると祖母に当たる人は孫の賢希が生まれる前に病死、祖父にあたる人は彼が物心つく前に痴呆が急速に進行して施設に入り、家族と職員の判別がつかない程だったという。当然彼の祖父母の遺品等は、屋敷に一切持ち込まれていない。

 事情を知らない来客を驚かせてしまうくらいで、特に害はないので放置している。

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