第8話 『灼熱の湯』
銭湯マスター
著者:ピラフドリア
第8話
『灼熱の湯』
ヌルはぬるま湯好きだ。
ヌルは一子相伝の最強の技、布類沼流(ヌルヌル)神拳の継承者であった。
その奥義は何千年もの昔から受け継がれ、世代を超えて、正義のために悪を払う。伝説の奥義として受け継がれてきた。
そのためにヌルはいくつのも修行を乗り越えてきた。
ある時は冬の滝に打たれ、ある時は冷蔵庫の中で生活して、ある時は雪の中に埋もれて半日以上を過ごすという修行も行った。
そのどれも奥義習得のため、奥義のためにはどんな気候であっても汗を出す必要があったのだ。
そしてヌルの身体は寒い季節であっても、自在に汗を出すことができるようになった。
そして汗を出したり止めたりも自在に行うことを可能にして、自身の中の水分のコントロールを行う技術を手に入れたのだ。
「この試練を乗り越えたのなら、ヌル。お前を後継者と認めよう」
師匠であるヌメメはヌルに最後の試練を与えた。
それは極寒の地で、20メートル×20メートルの大穴を開けるという大試練。
ヌルはそれをたった一人で行い、約三ヶ月でそれを完成させた。
その大穴は地下100メートルにも達し、過去にはロケット発射状と使われたことや、囚人を捕らえる監獄として使われることもあった。
こうしてヌルは一子相伝の奥義を習得した。
そしてこの銭湯グランプリへ挑んだのである。
自在に汗をコントロールする能力。それを手に入れたヌルは最強……だが、その考えは甘かった。
ヌメメはヌルに一つ教え忘れていたのである。
それはこの奥義は暑さに弱いということだ。
どんな気候であっても汗を出すことのできる子の体は、寒さに強い身体へと進化した。
だが、ヌルの身体は暑さには弱かったのだ。
ヌメメは観客席から暑さのあまり飛び上がるヌルを見て目を瞑った。
そして心の中でつぶやいた。
すまん。
シタベーは実況する。
「おーっと!? ここでヌル選手が脱落だー!!」
ヌルが脱落してしまった。
残る選手は、
ナガオ、ハヤオ、アツギの三人。これからが勝負だ。
三人はお湯に浸かりながら、睨み合う。
負けられない戦い。この銭湯グランプリで勝利するために……。
「さぁ、残るメンバーはこの三人だ!! 次の脱落者は誰なのか!?」
シタベーはワクワクしながら解説を続ける。
観客も楽しそうにこの様子を見守っていた。
そして観客席にいる。男も……。
「やはり残るのはこのメンバーか。さぁ、見せてもらおうか。お前たちの力を……」
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このよく分からない謎作品も終わりが近づいてきました。
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