第6話 おむすび(お結び)

おにぎり


サンサンと降り注ぐ朝日が春の訪れを告げようとしている

今日はやることがあるんだ

二度寝なんてしてられない

僕は布団から飛び起き、リビングへ向かった

兄さんの姿は見えない

まだ朝早いので寝ているのだろう

昨日の晩、セットしていた炊飯器がピーッとなりお米が炊けた事を知らせてくれた

今日は新学期の始まる日

こんな日は「おむすび」を食べるんだ

『おむすびは、お結び。つまり良い縁を運ぶんだ。』

兄さんがそう教えてくれた。

僕にとって、おむすびだろうがおにぎりだろうが関係ない。腹に入ってしまえば同じことなんだから

けど兄さんは

『おにぎりは鬼斬り。禍を避けるんだよ。もちろんこっちでも良い。けど俺はお前には沢山の縁に囲まれてて欲しいんだ。から俺が作るのはお結びだ。』

なんて言うからそういうものなのかと納得した。兄さんの作るおむすびは全く具材が入ってないんだ。『シンプルイズベストだろ〜』なんて笑っていたけど僕は具材を用意するのが面倒くさかつただけの事を知ってる

けどまぁ兄さんの塩むすびは好きだからいいんだけど


何時からだろうか…兄さんは僕におむすびを作ってくれなくなった まぁ僕ももう子供ではないから泣きわめいたりはしない。けどたまに食べたくなるんだ。兄さんの作ってくれたなんにも入ってない塩むすび

僕も子供じゃない。作ることには作れる

けど何かが足りない…兄さんのあの味にならない。

んーまぁしょうがないか。今日はこれで。

兄さんのおむすびも握って、僕のも握って

よしっ準備は完了。

あとは兄さんを待つだけだ。早く起きて来ないかな。冷めたおむすびも美味しいけれど、できることなら熱々のうちに食べて欲しい。

そして食べてる時に聞くんだ

どうやってあの美味しさを出しているのかを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る