砂浜と道具

とと

第1話

 浮気がバレた。


 26才同い年の結婚3年目。

 子なし共働き。

 夫も私も営業職。

 特に家庭のルールなどはなく、家事はできる方がして、毎日笑顔で会話をする。

 身体の相性も良く週2・3で励む。

 友人・同僚たちから聞く夫婦生活よりもいい夫婦をしてると思う。


 それでも私は不倫していた。

 夫との生活に問題なんかない。不満もない。

 それでも漠然となにかが足りないと感じていた。

 不倫相手に誘われて抱かれて、刺激が足りなかったんだと気が付いた。

 

 円満な生活、幸せが日常になり、恐らくここで子供を作るべきだったのだろう。

 けれども不倫を受け入れた私なのだ。

 子供を作ったところで、どこかで不倫していただろうと思う。



 今日は日中からホテルに行って、汗だくになって励んでいた。

 相手は営業先の顧客で既婚。半分枕みたいなもの。

 就業時間中に不倫する。

 ダブルの背徳感がスパイスになって、夫のそれとは違う快感を生み出す。

 当然、プレイも夫とはほとんどしない内容になる。


 ホテルから出ても快感の火照りが残っていて足取りは遅い。

 ホテル街から駅までは、直線で5分ほどの道程。

 途中、都心の一等地とは思えないくらい大きな駐車場がある。

 駐車場が見えた辺りで、反対側の歩道、少し後ろくらいにいるカップルに気が付く。

 同じタイミングでホテルを出たのだろう、前後に連なるのは避けたかったのかな。


 脇目に男はストライプの入ったスタイリッシュなスーツ、女は男の好みか白のワンピにパステルピンクのカーディガンでいかにも清楚を作ったような感じだった。

 仕事中?平日からお盛ん。アッチも帰りなんだろうな。

 と、思いながら自分と同類を見つけたようで嬉しかった。


 あちらは途中の喫煙スペースに、こちらはスマホの相場を見にケオに入る。

 スマホも昔の型でそろそろかなと思っていた。

「ワタシホンって中古でも思ったより高いね。でもこれに買い換えようかな?」

「セカンドにしてうちらの専用回線にすれば?」

「いいかも!そしたらバレにくいね!」

「だったら本体安いのでもよくね?SIM契約だけにすればいいじゃん」

「そっかそういうプランもありだね」

 なんて話をしながらケオを出た。


 歩道を渡り駅北口の入り口階段まできた所で、パステルピンクが視界の端に引っ掛かった。

 さっきのカップルかな?なんとなしに目線を送ると・・・。


 驚き。

 女の相手は夫だった。

 思わず、「あっ」と声がでる。

 でも納得、なるほど似たもの夫婦だったのか。


 夫はビクッとなっている。

 私の声だから反応したのかな?少し笑える。


 キョロキョロと辺を見回して、最後に私を見る。

 目が大きく見開いていた。

 ウケる。

 こっちが先に見つけたから余裕があったけど、逆なら同じ反応してただろうね。

 けれど直ぐに立ち直ったようだ。

 怒っている様子はなく、ピンク女に慌てた様子で話をしていてる。


 にしてもピンク女の方が胸がでかい!くそ!

 夫の不倫には腹が立つことはなく、相手のスタイルにイラッときてた。

 私は不倫相手の腕に胸を押し付けながら階段を降りていった。


 その夜。

「いや~焦ったよ」

 夫は私の顔を見るなりそう言った。


「あの後、キョドったの突っ込まれてさ。とっさに誤魔化しちゃった」

「見てたアタフタしてて可笑しかったよ」

 いつもは自身満々の夫がアタフタする様子を思い出す。

 お互い様だからか、怒りは無く、面白かった。


「こんなバッティングするとは思わなかったね」

「ほんと、でも怒ってないよ。まあ怒れないけど」

「うん私は似たもの夫婦だなって思った」


「彼女は補助についたって言ってたR美ちゃん?」

「そうそう。よくわかったね?」

「なんとなくね。・・・巨乳だったし(小声)」

 思い出して少しふてくされた。


「でそっちは?」

「うんお客さん」

「えっ?」

 びっくりした表情の夫。

 バッティングしたときより驚いている。なんでだろ?

「なんかおかしかった?」

「お前の仕事って風俗だったっけ?」

 ・・・。

 なるほど。ごめんごめん。

「違うよ~営業先のお客さん」

「なんだびっくりさせるなよ。さすがに風俗だったら引くわ」

「だよね~。でも半分枕入ってるから似てるのかな?」

「いやセーフでしょ」

 そっかセーフなんだ?ん~よくわからない。


「それより私よりデカくない?」

 胸を両手で揉みながら、夫の目をじぃっと見つめる。

「ごめんごめん。ついつい」

「隣の芝生だよね」


 少し恨み節になったけど喧嘩にはならなかった。

 食事は私が作り、いつも通り会話も弾んだ。


 ベッドに入ると何か思いつた様子で

「そういえば、これってNTRっていうんだろ?」

 と言い出した。

「ん?寝取られ?どうなんだろ?ダブル不倫じゃないの?」

「いや違うネトラレだ!くそぉ~!ふざけやがって!」

 夫は私に覆いかぶさり、両手首を押さえつける。

 でもすっごいニヤニヤしている。

 あっプレイかな?合わせてみるか。

「違うの!ごめんなさい。あなたをアイシテル・・・アハハハハ」

 だめだ笑っちゃった。

「笑ったらダメじゃん」

 ですよね。


 夫の眼差しがそっと私に近付いてくる。

 唇を啄むようなキスから、どんどん情熱的なキスになっていく。


 その日はすごかった。

 過去いち燃えて何度も何度も抱き合った。


 不倫に馴染んだら次の刺激ってなんだ?

 この先の欲望に少し不安を覚えるが、今快楽が実感できればいいか。


 不倫相手には悪いが、うちらの相性はいいようだ。

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