第九回:佐島紡『世界の中心で鳴く僕』(1)
▼ 作者に聞け 早いもので、この仮想インタビュー企画『作者に聞け!』も、九回目を迎えました。本日のゲストは、
● 佐島紡 よろしくお願いします。
―――― ペンネームの由来 ――――
▼ 作 最初に、ペンネームの由来を教えていただいてもよろしいでしょうか。
● 佐 僕の本名は、どちらも訓読みで構成されているのですが、それを音読みに、そして順序を入れ替えて、
▼ 作 なるほど。一部は、ご自身のお名前をもとに作ったペンネームなのですね。
● 佐 そうなんです。他にもいろいろと候補がありましたし、実際いくつかの名前で活動しているのですが、趣味嗜好じゃ変わらない本名を使っているせいか、なんだかんだこの名前が一番しっくりきている感があります。
―――― 二次創作と原作 ――――
▼ 作 ありがとうございます。さて、今回取り上げる作品は、その佐島さんの最新作『世界の中心で鳴く僕』です!
『世界の中心で鳴く僕』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860983865815
今のところ、投稿先はカクヨムのみなんですよね?
● 佐 そうですね。今、主に利用しているのが、カクヨムなので。
▼ 作 さて、この作品は、なんさんの短編『世界の中心に居た僕』(以下、『居た僕』)の二次創作となっています。
『世界の中心に居た僕』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860465140821
https://ncode.syosetu.com/n3388hl/
なんさんには、このインタビュー(第三回)を受けていただいたこともありました。カクヨムや「小説家になろう」で活躍され、「小説家のつどい」メンバーの一人でもあります。
二次創作の作品を取りあげるのは、今回が初めてなのですが、まず確認させていただきますと、佐島さんは「小説家のつどい」でなんさんの作品を知り、二次創作をしようと考えられた?
● 佐 そうですね! グループ内の宣伝スレッドに『居た僕』が投稿されておりまして、短い字数ながら、いろいろと妄想膨らむ筋立てに魅了され、思い切って許可をお願いしました。
▼ 作 なんさんの『居た僕』は、二〇二二年二月七日公開、佐島さんの作品は、二月二十二日の公開です。作品自体が「小説家のつどい」という場から生まれたものということになりますね。
● 佐 そうなります。
▼ 作 なんさんの作品の、どういったところに惹かれたのかという事情は、後ほど詳しく伺うことにしましょう。普段なら、作品の紹介から始めるところなのですが、今回はまず、なんさんの『居た僕』から簡単に振り返りたいと思います。
こちらは、一話完結、約千三百字の小品です。
〈主人公の
まわりの人々は、なぜかみな敬に対して、妙に優しくする。スーパーに買い物に行けば、頼みもしないのにレジの順番を譲られ、バイトの時給は勝手に上がる。
なんの不自由もない代わりに、生きているという実感もまったくもてない敬。来る日も来る日も自殺を企てるけれど、そのたびに自殺は失敗し――彼はまた、誰に読ませるでもない日記の新たなページを書く〉
おおよそ『居た僕』の内容は、このようにまとめることができるかと思います。実は、作者のなんさんが小説本文にあえて出していない重要な情報があるのですが、それについても後で触れることにしましょう。
佐島さんの作品『世界の中心で鳴く僕』に話を戻しますと、投稿開始は、前述のとおり、二月二十二日。四月八日現在、第二話まで公開中。文字数は、約三万五千字弱となっています。
簡単に内容を紹介させてください。
〈「僕」こと、主人公の
敬には、世間の人のような子どものころから続く記憶というものがなく、ここ数年のことを除くと、断片的な記憶ばかり。
その一方、敬にはどうやら「世界の事象を無意識に操る力」があるらしい。その力は、彼自身にも予期せぬ形で作動し、ときにすこし気味の悪い結果として現われる。
ある日、交通事故に巻き込まれそうになった敬の命を、謎の女性が救った。そのために、彼女のほうが命を落とすことになる――はずだったのだが、まもなく彼女は何事もなかったかのように、敬の前にふたたび姿を現わす。敬がそうなることを望んだから?
それから彼女とはしばしば顔を合わせる仲になり、敬は彼女に惹かれはじめる。そんなある日、敬のバイト先に客としてふらりと顔を出した彼女の行動で、敬の生活は大きく変わり始める〉
すこし長くなりましたが、こういったまとめでよろしいでしょうか。
● 佐 完璧です!
▼ 作 もし差し支えなければ、現時点で全体のどのあたりまで来ているか、教えていただけますか?
● 佐 もうかなりのところまでは来ています。仕込みは終わって、あとは力の謎、主人公の謎、彼女の抱える事情と、回収のパートに足を突っ込み始めました。
▼ 作 そろそろ佳境に入っていくあたりということですね。
(2)に続く
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