第七回:田崎伊流『親友』(1)
▼ 作者に聞け 今日のゲストは、
● 田崎伊流 よろしくお願いします!
―――― 作品紹介 ――――
▼ 作 今日は、田崎さんの短編作品『親友』を取りあげます。なお、あらかじめお断りしておくと、以下のインタビューは、物語の重要な部分に関わる内容(いわゆるネタバレ)を含んでいます。まだお読みでない方は、先に作品をご一読いただくようお勧めします。
『親友』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859855094915
千九百字弱の掌編で、これまでの『作者に聞け!』で最短記録になります。登場人物も、
簡単に作品の紹介をしてみますね。
〈とある町の夜。
――という感じかと思うのですが。
● 田 おおっ、素晴らしいまとめ、ありがとうございます!
―――― ショートショートと結末の意外さ ――――
▼ 作 確認ですが、公開しているのは、現状カクヨムのみですね?
● 田 はい。すべての作品は、今のところカクヨムでのみ公開しています。
▼ 作 田崎さんがカクヨムで公開されているのは、現在六作品。そのなかでも『親友』は、一番長い作品となっています。もっぱら短編を書かれていますが、やはり短いものを書くのが得意ということでしょうか?
● 田 はい。ショートショートに憧れてカクヨムを始めた側面があるので、短編だと意外とサクサク書けます。
▼ 作 もともとショートショートをよく読まれていたとか?
● 田 一時期、星新一さんのショートショートばかり読んでいたので、その影響だと思います。長編も好きではあるんですけどね。
▼ 作 なるほど。ショートショートといえば、やはり短いながら意外な展開を示して読者にアッと言わせるという構成が、魅力の一つかと思います。『親友』も、まさかの展開で読者を驚かせるものになっていますね。
● 田 はい。驚くようなオチは、意識しました。
―――― 着想の経緯 ――――
▼ 作 まずは、作品の着想についていくつかお伺いしたいのですが、この作品はコンテストなどの参加を意図されたものでしょうか?
● 田 いえ、コンテストは意識していません。
▼ 作 ということは、テーマや字数の制限もなく、自由に着想されたということですね。
● 田 はい。
▼ 作 このテーマを選ばれた経緯などをお聞かせいただきたいのですが。できれば、女の子二人の登場人物にした理由なども伺いたいです。
● 田 最初は思いつきからです。「女の子二人のちょっとした物語を書きたいな」と。そこから意外性や独自性を求めました。女の子にした理由は特にありません。思いついたその時から、二人がいたので。
▼ 作 なるほど。では、墓場のモチーフなどは、後から加わったということですか?
● 田 実は、当初の構想だと、香織は生きていました。墓場に行くのは決まっていましたが、単に肝試しをする話だったんです。そこから「幽霊になってもつながっている友情」というモチーフも思いついたので、合体させました。ちょうど、意外性を探していましたから、好都合でした。
▼ 作 そういう経緯だったんですね!
―――― 登場人物の会話 ――――
▼ 作 意外な展開が目を引く作品ですが、この『親友』にかぎらず田崎さんの作品は、登場人物たちの心の動きを丁寧にとらえようとする点が、一つの特徴になっているように思います。そこで生きてくるのが、登場人物たちの会話なんですよね。
一つだけ例をあげれば、『親友』の冒頭、黙々と墓地に向かって急ぐ紗南に対して、香織が投げかけるセリフがあります。
「ねぇ、本当に行くつもりなの……? 帰った方が、安全なんじゃないかなぁ?」
これ、上手いなあって思うんですよね。
どうしてかというと、夜中の墓地という、ちょっと気味の悪いシチュエーションなのに、どこかあっけらかんとした、ほとんどコミカルなトーンなんです。でも、このセリフが作品全体の、いわば伏線にもなっている。
紗南がなぜ墓地に行こうとしているのか、この時の香織は、まだ知らないんですよね?
● 田 はい。
▼ 作 夜中の墓地という重くなりそうなシチュエーションなのに、ここは親友同士の、いわば場違いなくらい和んだ空気感が出ている。お話を伺うと、設定・シチュエーションは後から決まってきて、それに合わせて登場人物の会話を考えたということなんですね?
● 田 はい。このセリフは、結末の影響をモロに受けています。特に、香織のセリフには気を使いましたね。怖がりの女の子なんだという印象を与えつつ、幽霊だからこその、どこか落ち着いた雰囲気をイメージしました。
▼ 作 そこは、すごく上手く行っていると思います。
● 田 ありがとうございます!
▼ 作 先ほども申し上げたとおり、登場人物たちの心の動きを丁寧にとらえようとするのが田崎さんの文体の特徴だという印象をもっていました。今のお話で、その印象が裏づけられた気がします。
―――― 短編と長編 ――――
▼ 作 一読者として、逆に不思議になるのは、どうしてこれだけ面白い題材なのに長編にしないんだろうという点です。紗南と香織の関係、もっと長いものにしたら、まったく味わいの違う作品になった気がするんですが、そこはやはりショートショートに対するこだわりということなんでしょうか?
● 田 いいえ、短編・ショートショートを好んで読んでいただけで、書き手として短いものにこだわることはなかったんです。実際に、長編のプロットは頭の中に二、三あります。長編を書き慣れていないというのが、正しいのかもしれません。
▼ 作 田崎さんのように、シチュエーションに合わせた魅力的な会話を書ける人が、長編を書かないのはもったいないという気がするんです。構想中の長編も、期待していますね。
● 田 短編・ショートショートは気軽に読めて、作者の作風をよく知れる小説でもあると思っているので、これからもショートショートは続けていきたいと思っています。
▼ 作 はい。田崎さんのショートショートも、光るものがたくさんありますね。
(2)に続く
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