第七回:田崎伊流『親友』(2)
―――― 二人の女の子の友情 ――――
▼ 作者に聞け 長編の構想についてもお尋ねしたいところですが、その前に「小説家のつどい」のメンバーから、『親友』について質問を受けたいと思います。いかがでしょう?
▼ 作 『親友』で、女の子同士の友情というエモーショナルなテーマをあつかったことへの感想とか、あつかいたいと思われたポイントはどういうものだったのでしょう?
● 田崎伊流 女の子でないとダメだった理由はありません。ですので、あつかったことに対する感想は特にありませんね。ただ、リアルな女の子の口調をうまく表現できていたらいいなぁと思いました。
なぜ女の子二人にしたのか。これは作品のイメージを思いついた時に二人が一緒に現れたので、そのまま素直に書いたというお答えになるかと思います。
▼ 作 そうか。女の子二人というのは、わりとイメージ先行だったんですね。
● 田 もし男の子二人を先に思いついていたら、男の子二人の友情を書いていたと思います。
▼ 作 二人の友情の雰囲気はリアルに感じました。まさに女の子らしい会話になっていて、女の子二人にしたのは正解だった気がしますが、この設定にしたのは、最初のインスピレーションということなんですね。
● 田 はい。「こういう作品にしたいから、登場人物は女の子にしよう!」と考えたわけではありませんね。
▼ 作 それも面白いですね。「小説家のつどい」では、創作などのことでメンバーの意外な一面を知ることもよくあります。
先日、田崎さんの作品についてお話している時、書かない部分やあえて見せない部分があるとおっしゃっていました。『親友』の設定も、「あえて書かなかったけど、こんなのあったよ」というのがあれば、お聞きしたいです。
● 田 そうですね。香織は紗南に守護霊として張りついていますが、最初の設定では、香織の墓参りに来ない紗南を不服に思い、あの世からわざわざ現れたという話だったんです。紗南は香織が死んだことにショックを受け、受け入れたくなかったので墓参りに来なかった。もし香織が死んだからといって早々に気持ちを切り替え、別の友達と楽しく遊んでいたら……などということを考えていました。
まぁ、ふんわり考えていただけなので、あえて伏せていた裏設定かと言われると、そこまでのものではありませんが。
▼ 作 そういうところのバランスはむずかしそうですね。
● 田 ええ。これを描写しても蛇足にしかならないだろうし、香織としても親友を疑ったことは隠したいはずなので、描写しませんでした。
▼ 作 なるほど。書くべき部分の取捨選択も練られてるんですね。
ちなみに、田崎さんは小説の執筆をスマートフォンでされているんですよね? プロットや思いついたことは、何かに書き留めたりしてますか? もしスマホなどのおススメのアプリがあれば、教えてください。
● 田 アプリは メモ帳とノベルスタジオ(Novel Studio)を使っています。思いつきや、いいセリフ、設定はメモ帳で書いて、プロットやキャラ設定、下書きはノベルスタジオで、と使い分けています。
―――― 驚きの結末がもつ意味 ――――
▼ 作 話を『親友』に戻しますが、先ほど話題になった香織のことで伺います。作品の末尾で、彼女の容貌について重要な情報が示されますよね?
● 田 はい! オチと同じくらい大事にしていた設定です。だから、もっと丁寧な描写をしてもよかったかなと思っています。
▼ 作 ということは、わりと早くに決めていた内容ということですか?
● 田 はい。香織を幽霊にした時と同じタイミングですね。
▼ 作 香織が幽霊だったという部分が読者を驚かせるとすれば、あの描写はさらに追い打ちをかけるものですね。最後に驚きの要素をもってきたいという動機がかなり強いのでしょうか。ハートフル・ホラーかと思いきや残酷な現実が、という展開に驚きました(笑)。
● 田 その側面もあります。ただ、僕が描きたかったのは「容姿をも超えた友情」です。幽霊とはいえ、生前とくらべて少し透けているかな程度の相手より、事故後の化け物のような容姿の幽霊との友情のほうが、感動も大きいと考えました。
▼ 作 なるほど!
―――― 投稿までの経緯とペンネーム ――――
まったく別の質問になってしまうんですが、これまで発表されている六編のうち、公開日の一番古いものが二〇二一年の十一月末ですね。もともとショートショートがお好きだったということですが、カクヨムに投稿されるようになった経緯など、教えていただけますか?
● 田 小説を読んでいくうちに「こんな世界観いいなぁ。あんな世界観にしたらもっと面白そうだなぁ」と考え始め、プロットもどきを練り始めたのが始まりです。最初は頭の中に留めておくだけでしたが、次第に人に見てもらいたい、感動させたいと思い、前から知っていたカクヨムに思い切って登録したんです。
▼ 作 なにか一つのきっかけというより、書きたいという気持ちが、結果としてカクヨム登録につながったという感じですね。
● 田 はい!
▼ 作 ペンネームもその時に決めたのでしょうか?
● 田 そうですね。小説を書くんだから、作家らしいペンネームにしようと思いました。ゲーム等ではすべて「たいりゅ」としていたので、そのもじりです。
▼ 作 最初に「たいりゅ」が決まっていた?
● 田 はい。
▼ 作 響きがいいですよね。。
● 田 ありがとうございます。「たいりゅ」はかなり気に入っているので、一からペンネームを考えるより、親しみのある「たいりゅ」を変化させたかったんです。
―――― 長編の構想 ――――
▼ 作 なるほど。そんな「たいりゅ」こと田崎伊流さんですが、これまでメインで書かれてきた短編だけでなく、今後は長編も書くことをお考えということでしたね?
● 田 はい。設定はメモ帳に写してあるので、後はそれをもとにプロットを作るだけです。現在、三作品を構想しています。
▼ 作 そんなにストックがあるとは! もしさしつかえなければ、どんなジャンルのお話なのか、お聞かせいただけますか?
● 田 一つ目は、報酬制の世界で四苦八苦する若きヒーローチームを描いた『ヒーローですがお給料はまだですか?』
二つ目は、剣と魔法、スキルと職業(この名称は未定です)のある世界で、スラム街に生まれ、窃盗に手を染めて生活している主人公の職業(?)が「人殺し」であることが分かる、というもの。こちらはタイトル未定です。
三つ目は、死んだ罪人の魂を封印する塔の管理者になれと迫られる死んだ十六歳の主人公と、どうしてもタッグが欲しい現管理者が、暴れる魂の鎮圧を進めていく話。こちらもタイトル未定です。
その他、短編のネタなんかも少しだけあります。今のところすべて物騒なので、ほのぼのとした作品なんかも書きたいですね。
▼ 作 最初の作品は、タイトルだけ見ると、ほのぼのしそうな気もしますが?
● 田 そうですねぇ。主人公たちのがんばり次第といったところでしょうか。
▼ 作 なるほど。独特な世界で、どれも面白そうですね!
● 田 数ある思いつきの中から選んだ精鋭たちですからね。大事にしていきたいです。
▼ 作 田崎さんからの回答を聞いていて思ったのですが、書きたいテーマのほうが先に立つ感じなのでしょうか? 内容が先なのか、テーマが先なのか、教えていただけますか?
● 田 書きたい場面を思いついて、そこから設定を膨らませている感じです。
▼ 作 場面先行ということですか。こういう違いも書き手さんによっていろいろあるので、面白いですね。
それでは最後に、田崎さんから読者に向けて、なにか一言!
● 田 ウェブ作家同士、高め合い助け合うことができたら素敵ですね。多数のウェブ作家が在籍しているディスコードグループ「小説家のつどい」、いつでもお越しください。
▼ 作 「小説家のつどい」の宣伝まで、ありがとうございます(笑)。素敵な締めの言葉、ありがとうございました!
インタビュー 二〇二二年三月二十五日、「小説家のつどい」内のチャットで実施
ゲスト 田崎伊流(たいりゅ)
司会進行 maru
質問者 ムツキ、田舎の鳩、なん
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