第四回:東『陰キャくんの、ネチネチ大学《キャンパス》ライフ』(1)



▼ 作者に聞け  第四回のゲストとしてあずまさんをお招きしました。東さん、どうぞよろしくお願いします!


● 東  よろしくお願いします!



―――― 作品の紹介 ――――


▼ 作  本日とりあげる作品ですが、この企画としては初めての完結した小説となります。


 まずは、簡単に作品を紹介させてください。


 『陰キャくんの、ネチネチ大学キャンパスライフ』

   https://kakuyomu.jp/works/16816927859349569224


▼ 作  カクヨムでのジャンルは「現代ドラマ」(「小説家になろう」では「ヒューマンドラマ〔文芸〕」)。二〇二一年十二月二十九日に投稿を開始して、二〇二二年二月九日が最終話となっています。


 全五十一話(約十二万四千字)で、各話に表題はなく、構成は以下のとおりです。


  プロローグ

  1 一~十四話

  2 十五~二十九話

  3 三十~四十九話

  エピローグ


 物語は、大学に入学したての一年生、「ぼく」ことリオ(夏川なつかわ李央りお)の視点で語られていきます(作中の短い一節を除く)。


 リオは、これといった特徴とか取り柄があるわけでもない、「どこにでもいそうな」学生として描かれています。彼自身、そんな自分が地味な存在――つまり「陰キャ」――だと思われてしまうことを、なんとか避けたいと感じている。


 だから、新しく始まる学生生活に、自分を変えるきっかけのようなものを漠然と期待していたのですが、入学直後、みずから積極的に動くことなく、結果的にタイミングを逸してしまう。


 こうして「華やかなキャンパスライフ」の夢が遠のきかけているところで、たまたま同じ授業に出ていたケンジ(滝田たきた健司けんじ)、カナト(野間のま叶人かなと)の二人と出会い、ケンジの発案で動画サークルを立ち上げることになります。


 動画撮影や編集について、知識も経験も技術もない三人。最初のうちは、動画をアップしても鳴かず飛ばず、思うようにはいきません。そんな中、リオは、動画サークルに関心をもったカホ(折本おりもと華歩かほ)の女友達リオ(遠田とおだ莉緒りお)と知り合います。二人の「リオ」が付き合いはじめることで、彼ら/彼女らのキャンパスライフが、すこしずつ動き出す――


 東さん、こんな感じのまとめでいかがでしょうか?


● 東  はい、完璧です! まさに想定した通りのあらすじになっていて、ありがたいですね。



―――― 主な登場人物 ――――


▼ 作  ありがとうございます。五十一話あるので、登場人物を全部紹介するとかなりの数になりますね。


● 東  そうですね。端役も含めると名前が出ているのは二桁いくくらいで。


▼ 作  はい。主な登場人物をちょっと整理しておきましょう。


〇 リオ(夏川なつかわ李央りお)=「ぼく」  大学一年生、十九歳。本作の主人公。平凡な学生だが、「陰キャ」あつかいされることに抵抗を覚えている。ケンジ、カナトたちと動画サークルを作る(広報担当)。リオ(莉緒)と出会い、付き合い始めることで、充実したキャンパスライフを始めたかに思われたが――。


〇 リオ(遠田とおだ莉緒りお)  大学一年生。動画サークルに興味をもつ友人カホ(折本華歩)を通して、動画サークルのメンバーと知り合う。サークルには(当初)入らないが、リオ(李央)の恋人になる。


〇 ケンジ(滝田たきた健司けんじ)  大学一年生。慎重に考えて行動するタイプではないが、行動力があり、まわりの人間を巻き込んでしまう。特にアイディアもなくリオ、カナトに「サークル作ろうぜ」と提案し、動画サークルを作る。


〇 カナト(野間のま叶人かなと)  大学一年生。おとなしい性格だが、動画サークルでは動画制作を担当し、急速に動画編集スキルを身につけていく。ボーカロイドの曲に詳しい。


〇 カホ(折本おりもと華歩かほ)  大学一年生。自分に自信がなく、見た目も性格も地味なほう。動画サークルに興味をもち、参加する。


〇 サキノ(富山とみやま咲乃さきの)  大学一年生(社会学部)。新聞部と動画サークルをかけもちする。ジャーナリストの父親の影響か、やたらとスクープを追いかけようとする。


〇 ミナガワ先輩(皆川みながわ)  大学二年生。新聞部員。朗らかで人のよさそうな好青年風だが、動画サークルのメンバーたちを暖かく見守っている。



―――― 物語の構想 ――――


▼ 作  キャンパスライフというだけあって、登場人物は、ごく普通の大学生ばかり。最初のうちは、これという大きな事件も起こらないのですが、後半、特に第三章からは、物語が一挙に動き出します。このあたりの展開は、圧巻でした。


● 東  そうですね。大学生のささやかな日常から社会の事件へ……というテンポアップはあります。


▼ 作  はい。予想を裏切る展開が矢継ぎ早に出てきて、エンディングに向けて加速していく。


 そこでお尋ねしたいんですが、プロットの骨格は、どういう感じで出来あがっていったんでしょう? 割と一気に作りあげた感じですか? それとも、書きながらすこしずつ膨らませていった?


● 東  はじめに、最初と最後の場面が出来上がっていて、そこから膨らませましたね。ただやはり、第三章は書きながら大きく舵を切り替えた箇所でもあります。


▼ 作  そうなんですか?


● 東  はい。漠然と大きな事件を起こそうとは思っていましたが、具体的に何があるかまでは未定でした。


▼ 作  それは意外です。あとから見ると、第一章、謎のボカロP(乱視ゼロコンマ)を追う話や軽音部のエピソードあたりから最後のエピソードまで、いろいろな出来事が連なって、最初から構想がかなり出来上がっているような印象を受けました。


● 東  そう言ってもらえて嬉しいです。


▼ 作  最後の場面は早い段階で決まっていたということですが、それはエピローグの箇所ですか?


● 東  そうですね。最後に主人公が何をしたら締まるかと考えたときに、やはり漠然とした期待を抱く誰かの期待に応えてやることだろうと思ったのでね。


▼ 作  それが、あのエンディングになったわけですね。


● 東  はい。本来であれば、ミナガワ先輩はもっと作品に絡ませるつもりでした。


▼ 作  ほう。


● 東  ですが、ケンジが主人公を導く役割を遂行してくれたので、そのままケンジに引っ張らせてみたんです。



(2)に続く

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