第34話 山賊の大将

 石段をのぼりきると、大きな鳥井があった。


 その向こうには仁王立ちする長い金髪の山伏姿の女。年は十七か十八というところか。背中から黒い翼が生えているので一目で烏天狗の血が混じってると分かった。腰に大小あわせて三本の刀を差している。あの天狗がくだんの山賊の大将だろう。


「よくも、かわいい部下たちを痛め付けてくれたな。頭(かしら)としてあたいがのしつけて返してやんよ」


 大将は千里たちを視界に捉えるなりそう啖呵を切った。


「こっちは村人たちがされたことをのしつけて返したつもりなんだけどな」


 と返す千里。


「は、部外者が偉そうにしゃしゃりでやがって」


 そう言って唾を石畳に吐いた。


「忍でもねえくせに忍のまねごとかよ?ずいぶん暇をもて余してるもんだよなあ?」


 と言うので、十戒が一歩前に出て、


「それなら。元忍の拙者がお相手いたそう」


 と言う。


「おいおいなめられたもんだな、あたいは構わないんだぜ、三対一でも」


 なおも強気の大将。


 それに対して、


「いいや、拙者一人で十分。その代わり条件をつけよう」

「あん? 条件だあ?」

「ああ、負けた方は勝った方の言うことをなんでもきく。これでどうだ?」


 この言葉に大将は猛りきって、


「ああ、いいぜ、やってやんよ。てめえら全員、全裸で土下座させてやるよ!」


 他方、十戒は冷静で、


「そういうことです、主(あるじ)、千里。下がってみていてくれ」


 が、千里はやや心配して、


「大丈夫かよ?なんか相手は妖術使うらしいけど」


 それに対して、


「分かった、ここは十戒にまかせる」


 と、背中を押す百。


「武器や術の使用は無制限、それでいいな?」


 と十戒が確認すると、


「は、あたぼうよ! 吠え面かかせてやらあ!」


 と大将。


「では、いざ、尋常に!」


 

 そう言うと十戒は袈裟を脱ぎ捨て、その下に着込んでいた忍装束があらわになった。

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