第33話 山賊

「山賊討伐の前に言っておきたいことがある」


 宿屋の布団で朝を迎えたとき、二人を見つめながら百が言った。


「向こうは山賊といっても、人死には出してない。なら、こっちが攻めるときも人死には出さない。全員峰打ちにして、大将は生け捕りにする」

「御意」


 素早く応じる十戒。


 千里も、


「まあ、死なせちまったら寝覚めが悪いからな。俺たちはあくまでも鬼狩りだし、百の言うとおりにするよ」

 




 そして、囲まれる三人。


 襲い来る五人の山賊。


 まず、百が一歩で山賊との距離を詰めて拳でえぐるように腹を殴る。吹っ飛ばされ、木にぶつかる山賊。


 十戒は相手の刀をかわして、相手のうなじに肘鉄をお見舞いする。


 千里も槍をかわして至近距離で相手の目に矢を放つ。


「よっしゃ! これで残り二人!」


 そう言って振り向いたときには、すでに百と十戒が残りの二人を仕留めていたところだった。





 その調子で進んでいき、襲われては返り討ちにしてを、三回ほど繰り返していると、長い石段にたどり着いた。


「討ちもらした賊はここへ駆け込んだみたいだな」


 と千里が言うと、


「ああ、ここが賊の本拠地なのであろう」


 と十戒も頷く。


「本拠地なら、守りも一番堅いはず。抜かりなく行こう」


 と百。


 そうして石段を登り始める三人。すると中腹あたりで横から矢が飛んで来る。


「――!?」


 千里には見えなかったが、百と十戒によって、ことごとくの矢が撃ち落とされた。そして二人とも石段の脇の森の中へ突っ込む。次の瞬間、聞こえてくる悲鳴。


「あ、あはは……。味方にするとこうも頼もしいんだな。これじゃどっちが山賊なんだか」


 そう呟いていると二人が戻ってきて、


「たぶん、あれで最後」

「はい、残すは大将のみでしょう」


 と言う。


「よし。じゃあ、さっさと行って、ちゃっちゃと片付けようぜ」


 百を先頭にして、再び石段を登り始める三人だった。

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