第30話 土蜘蛛
百が匂いで土蜘蛛を探しながら歩く。
「あれから一月経つけど、分かるものなのか?」
千里が尋ねると、
「分かる。かなり濃い鬼の匂いだから」
数日歩いて、とうとう一行は土蜘蛛を見つけた。脚が刀のようで、体躯はニ間もあろうかという巨体。
「こっちにはまだ気づいてないみたいだな」
と千里。
「足が七本になっているところを見るに、他の鬼狩りと交戦したらしい。再生能力はないようだ。……持久戦になれば勝ち目はない。迅速に行くぞ」
と十戒。
「それじゃ、作戦どおりに」
と百が飛び出す。
足音で気がつき、こちらを振り返る土蜘蛛。しかしその頃にはもう百の間合いに入っていて、斬撃一閃、足が吹っ飛び残り六本になる。
すると土蜘蛛が糸の塊を発射しようとし、そこへ
「せいっ!」
十戒が閃光玉を投げた。
炸裂する強烈な光。百を外れる糸の塊。そして土蜘蛛が視力を失っているうちに、
「我、招、理、是、引、是、書……」
十戒が懐から巻物を取り出して詠唱を開始する。
その間にも千里が弓で土蜘蛛の目を一つ一つ潰していく。百は土蜘蛛の脚を二本吹っ飛ばし、残り四本。相手が逃げることを阻止する。
そして、とうとう詠唱が終わり、
「……雷、撃、槍!」
巻物が青白く燃えて、そこから強烈な稲妻が迸る。十戒は雷でできた槍を手に持ち、それを放つ。稲妻は鉄でできた土蜘蛛の脚に直撃し、直後に土蜘蛛が痙攣を起こす。
「しめた! あの脚の硬さと光は間違いなく金属! そしてそこに電気を流せば生身の部位まで感電する!」
その隙を逃さず、土蜘蛛の目に苦無を投げる忍者。目を潰され、逃げようと背を向けるも、思うように跳ねられず、脚の刃を振り回す土蜘蛛。
「俺だって負けてられねえ!
我、招、理、是、雷、撃、槍!」
十戒のものより細い稲妻が真っ直ぐに土蜘蛛の脚に直撃する。苦しそうにのたうちまわる土蜘蛛。
「今だ、百!」
千里の掛け声に反応し、助走をしてから跳躍する百。高く高く跳びあがり、
「――」
土蜘蛛の脳天に大剣を突き立てる。それでもしぶとく逃げようとする土蜘蛛に対し、何度も大剣をぶっ刺す百。とうとう動かなくなる土蜘蛛。
「やったぜ! 土蜘蛛討伐! 俺たちの勝利だ!」
「千里もよくがんばった」
と大剣を背負い、千里の頭を撫でる百。
「ま、まあな! 俺たちにかかればこのくらい朝飯前よ!」
顔を赤くしながら照れる千里。
「そういうことにしておく」
騒がしい二人を脇にして、
「とうとう、本当に、やったのだな……」
一人たそがれている十戒だった。
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