嫌な予感
前回ので終わりでも切りがいい?ですが、構成的にはもう少しで終わりなので、そこまで書こうと思います。(タイトルも関係なくなりますしね)
ただ、良い展開と言えるか自分でもわからないので、綺麗な形で終わりたい方はここで切って大丈夫です!(ややハッピーな展開とは言えないです)
***
夢を見ていた気がする。
幸せな夢……だったような。
ずっと見ていたいほど、けれどそれ以上に今が幸せなので、特に問題はない。
俺は舞花と結婚して二年が経過した。
あっという間だった気がする。
特に大きな出来事もなく、卒業し結婚した。
結婚してからというもの、小さい喧嘩はたまにするが基本的には仲が良い。
俺がプロポーズしてから、あいつは凄く積極的になった。
良くも悪くも。
あいつはとうとう留学の話さえ蹴った。
でもこうして留学を断ってまで俺といることを選んだとなると、俺も頑張ろうと思った。
この選択を選んだことを後悔して欲しく無い。
だから彼女といる時は何事も本心で、本気で楽しんでいる。
俺は舞花を幸せにする。
何度と言ってきた言葉であるし、心から思う事だ。
「舞花、まだかなー」
今日は少し喧嘩をした。
たまにだが、あいつは喧嘩をする時家から出て行く時がある。
だがこれもお決まりの形がある。
休日。
昼に喧嘩し出て行き、夜には何事もなかったように帰ってくる。
その間に俺は夕食(舞花の大好物)を作り待っている……という流れだ。
半年に一度はこのようにお互い言いたい事を言い合って、良い関係を続けている。
正直、それも込みで充実している。
毎日が幸せだ。
ちなみに今日は『子供は何人欲しいか』でバトった。
正直どうでも良い話題だ。
それほど、互いに不満がなくなってきた証拠だと、思う。
それにしても……
「今日は……遅いんだなぁ」
時計はもう午後八時を回っている。
このくらいの時間に帰って来ない日はいくらでもある。
だがこういう時には必ず連絡が来ていた。
「ま、まったく……ハンバーグ冷えっ冷えだよ……」
うまく言葉が発せられなくなってくる。
何故だろうか……。
呼吸は荒くなり、何度もちらちらとスマホを見る。
ただ帰りが遅いだけなのに……それだけなのにただならない不安があった。
ふと、舞香の母、実さんの日記を思い出す。
……なぜか、このタイミングで。
嫌な予感。
よく当たってしまう嫌な予感。
そして考えてしまう、『もし』の事。
(そんなわけ……ないだろう……)
突然、俺の体をちゃんと立てているのか不安になるほどの吐き気と鳥肌が一斉に襲ってきた。
ただの杞憂であって欲しい。
そう願った。
ただ願った。
プルルルルル……プルルルルル……
「!?」
全身がピクリと驚く。
どうやら電話のようだ
「……きた!」
電話が来て嬉しい気持ちと……嫌な予感がなくならない。
心を落ち着け、震える手で自分のスマホを取る。
(いつもより遅いだけで何慌ててんだ! 俺!)
「もしもし……」
「もしもし、太郎くん。どうか落ち着いて聞いてくれるかい」
電話相手は大吾さんだった。
……。
……言葉が頭の中に入ってこなかった。
気づけば、家を出て走り出していた。
大吾さんと合流した。
「〇〇さーん!! 聞こえますか!!」
「意識不明の重体、急いで!」
周りはやけに騒がしかった。
見れば救急車からガラガラと音を立てて誰かが運ばれている。
よく……知っている顔だ。
「ま……舞花!!!」
「離れてください!!」
看護師に止められる。
パッと見、外傷はない。
でも意識がない。
「太郎くん、落ち着くんだ」
落ち着けるわけがない。
嫁が……一番大切な人がこんなことになってしまっているのに落ち着けるわけがない。
頭がどうにかなりそうだった。
「……!! 実の娘だろ!!何でそんなに冷静なん――っ!」
大吾さんの顔を見ると、落ち着いていた。
でも、俺を引き止める手は……震えていた。
「あっちに座ろうか……」
なんで考えられなかったのだろうか。
この人も俺と同じ……いや、俺よりも辛いだろう。
嫁が交通事故で記憶喪失……そして死亡。
そして娘もまた交通事故。
……冷静なはずがないのだ。
今も叫びたくて叫びたくて仕方がないのだ。
俺たちは少し離れた席に着く。
「……車との衝突事故。舞花は青信号で普通に歩いていたんだが、車の運転手の方が飲酒運転をしていたらしいんだ」
正直、今この起こっていることが現実とも思えない。
ただただ、運転手への怒りが溜まっていく……。
「跳ねられた舞花はそのまま頭から転倒。……後頭部に傷を負い、今は意識がない」
ガタッ
思わず、席を立つ。
「太郎くん。今、私たちに出来ることは現状を把握することと……ただ祈ることだ」
「っ……!」
頭の中を見透かされたような気分だった。
「はい……」
今、出来ることは逃げ出すことでも車の運転手をぶん殴りに行くことでもない。
頭ではわかっている……わかっている。
その長い長い夜は、本当に気が狂いそうだった。
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