第5話 五空母被弾
第一航空艦隊に最初に襲いかかってきたのは三〇機あまりのF4Fワイルドキャット戦闘機と六〇機近いTBDデバステーター雷撃機だった。
一航艦上空で警戒任務にあたっていた零戦は低空に舞い降り、F4Fの妨害をものともせず面白いようにTBDを撃ち落としていく。
鈍足なうえに米機にしては防弾装備が貧弱なTBDは零戦からみればただのカモにしか過ぎなかった。
だが、好事魔多し。
零戦の強さに拍手や喝采をあげて喜ぶ一航艦の将兵たちだったが、その彼らが気づかないうちに多数のSBDドーントレス急降下爆撃機が高空から忍び寄っていたのだ。
いち早く気づいた外周の駆逐艦が主砲の仰角を最大にしてSBDに向けて射撃を開始する。
異変を察知した零戦の搭乗員らもまた、投弾を阻止しようと急上昇をかける。
零戦は上昇力に優れる機体だが、それでも雷撃機を仕留めた海面高度から急降下爆撃機がいる中高度までに達するには相応の時間がかかる。
真っ先に狙われたのは一航艦の六隻の空母の中でも破格のボリュームを持つ「赤城」と「加賀」だった。
三三機のSBDからなる「エンタープライズ」爆撃隊と同索敵爆撃隊から奇襲同然の攻撃を受けた「赤城」と「加賀」は、それでも必死の回避運動でその投弾の多くを空振りに終わらせる。
だが、被害無しで切る抜けることはかなわなかった。
「赤城」は三発、加賀は四発の一〇〇〇ポンド爆弾をそれぞれ飛行甲板に食らってしまう。
中でも「加賀」は被弾したうちの一発が艦橋至近に命中、同艦は一瞬にして艦長以下の主要スタッフを喪失した。
次に狙われたのは最後尾をいく「翔鶴」と「瑞鶴」だった。
「レキシントン」から発進した三四機のSBDは爆撃隊と索敵爆撃隊の二手に分かれて両艦を攻撃、三四ノットの高速を誇る「翔鶴」型空母といえどもそれぞれ二〇機近いSBDから狙われては無事で済むはずもなく、「翔鶴」は三発、「瑞鶴」は二発を被弾した。
「蒼龍」は一七機からなる「ヨークタウン」爆撃隊に狙われた。
技量優秀な同隊の攻撃によって「蒼龍」は三発を被弾、六隻の空母の中で最も脆弱な同艦はあっという間に炎と煙に包まれた。
最後にやってきたのは「ホーネット」爆撃隊と同索敵爆撃隊の三五機だった。
こちらは一航艦の空母の中で唯一無傷を保っていた「飛龍」を狙う。
しかし、「ホーネット」隊が一航艦上空に到達した頃にはさすがに低空にあった零戦隊も迎撃高度に到達していた。
立て続けに母艦を傷つけられ、頭に血がのぼった零戦搭乗員らは容赦が無かった。
爆撃を試みる機体はもちろん、早々に爆撃を諦めて爆弾を投棄した機体も執拗に追い回し、ありったけの二〇ミリ弾や七・七ミリ弾を撃ち込んでそのほとんどを撃墜した。
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