第3話 第二次攻撃隊

 第二次攻撃隊は米機動部隊のかなり手前で三〇乃至四〇機ほどのF4Fワイルドキャット戦闘機の迎撃を受けた。

 護衛の零戦のうち敵戦闘機の積極排除あたる制空隊の二四機が翼を翻してF4Fに立ち向かっていく。

 残る一二機の直掩隊は九九艦爆や九七艦攻のそばから離れない。


 制空隊の零戦は数的劣勢にもかかわらず、逆にF4Fを追い回していた。

 それでも数機のF4Fが制空隊の防衛網を突破して攻撃隊に迫る。

 だが、それらは直掩隊の零戦によってことごとく追い払われてしまう。

 零戦のおかげで敵艦隊上空に来るまでに失われた九九艦爆や九七艦攻は一機も無かった。

 第二次攻撃隊指揮官の友永大尉は零戦隊に感謝を捧げるとともに、眼下の米機動部隊を見据える。

 空母二隻を中心とした輪形陣。

 護衛の巡洋艦や駆逐艦もそれなりに充実しているようだ。

 友永大尉が考えている時間は短かった。

 かなり遠めなのにもかかわらず、高角砲による濃密な弾幕に包まれつつあったからだ。

 あまり悠長に目標を観察していると被害が出そうだった。


 「『赤城』隊ならびに『加賀』隊は巡洋艦と駆逐艦、『蒼龍』隊は前方の『ヨークタウン』級、『飛龍』隊は後方の『レキシントン』級を狙え」


 友永大尉の命令一下、先に九九艦爆が輪形陣の外郭を固める巡洋艦や駆逐艦に急降下を開始する。

 すでに射撃を開始している高角砲に加え、機関砲や機銃の火箭が九九艦爆を捉え始める。

 たちまち数機の九九艦爆が煙の尾をひきずって海面に落下していく。

 だが、それ以外の機体はひるむことなく米艦へ突っ込んでいった。


 一方、次々に撃ち墜とされる九九艦爆を視界の隅で捉えながら友永大尉は直率する第一中隊を率い、「レキシントン」級の左舷から肉薄する。

 反対舷には第二中隊の九機が同じように必殺の九一式航空魚雷を見舞うべく超低空を這うように迫っているはずだ。


 眼前の「レキシントン」級は思いのほか速かった。

 自らの母艦である「飛龍」に匹敵する高速で波を蹴立てて驀進している。

 だが、一方で回頭性能は「飛龍」ほどではないようだ。

 第一中隊は砲煙弾雨の中、「レキシントン」級空母に迫る。

 回頭によって被雷面積を最小にしようとする同艦に対して艦攻隊も理想のポジションを維持すべく飛行コースを微修正する。

 空母に近づくにつれて敵の射撃がより激しく、そしてより正確になってくる。

 一機が高角砲弾の至近爆発によって海面に叩き落され、さらに一機が多数の機銃弾を浴びて爆散する。

 だが、生き残った七機は友永大尉の誘導のもと理想の射点に到達する。


 「撃てッ!」


 重量物の魚雷が胴体から離れ機体が浮き上がる。

 眼前の巨大な空母は必死の回頭で魚雷を躱そうとするが、必中射点で投下された七本の魚雷をすべて回避することは不可能だ。

 命中を確信しつつ、友永大尉は「レキシントン」級空母が放つ火箭から逃れるべく必死の逃亡を図る。

 命中を確認するまでは死ぬわけにはいかなかった。

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