第2話 第一次攻撃隊

 一九四二年六月五日、作戦発起点であるミッドウェー北西海域に到達した第一航空艦隊は第五航空戦隊の空母「翔鶴」と「瑞鶴」からそれぞれ零戦一二機に九九艦爆一五機、それに九七艦攻一二機の合わせて七八機からなる第一次攻撃隊をミッドウェー島へ向けて発進させた。


 同時に第一段索敵として「翔鶴」と「瑞鶴」からそれぞれ九七艦攻四機、三〇分後には同じく「翔鶴」ならびに「瑞鶴」からそれぞれ艦攻二機と重巡「利根」「筑摩」からそれぞれ零式水偵二機の合わせて一六機による二段索敵を実施した。

 対潜哨戒も従来以上に充実させている。

 なにせ、ここミッドウェーは米軍のホームグラウンドと言っても差し支えない海域だからだ。

 こちらは「利根」と「筑摩」の艦載機だけでなく、「翔鶴」と「瑞鶴」の六機の九九艦爆が交代で海中に潜む刺客ににらみを利かせることになっている。


 索敵については先日のインド洋作戦の際に敵主力艦隊を捕捉出来なかった不手際を反省し、一二機の九七艦攻と四機の零式水偵を投入していた。

 合わせて一六機もの索敵機を放った恩恵は大きかったようで、第一段索敵に出した九七艦攻からさっそく敵機動部隊発見の報が飛び込んでくる。

 ミッドウェー基地に対する第一次攻撃隊を出してからここまで二時間ほどしか経っていない。

 つまり、敵機動部隊はミッドウェー基地の救援要請を受けて駆けつけてきたのではなく、最初からこの海域に存在していたのだ。

 間違いなく待ち伏せだった。


 一航艦司令部のほうはミッドウェー近傍海域に敵機動部隊はいないという前提で行動計画を立てていたから、南雲長官も草鹿参謀長以下の司令部スタッフも誰もが驚きを隠せなかった。

 発見された敵の機動部隊は二群からなり、一群は「ヨークタウン」級二隻、残る一群は「ヨークタウン」級と「レキシントン」級からなる部隊だった。

 すでに飛行艇、おそらくはPBYカタリナによって所在を暴露されていたこともあり、南雲長官はただちに攻撃隊の発進を命じる。

 一航戦の「赤城」と「加賀」からそれぞれ零戦九機と九九艦爆一八機、二航戦の「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ零戦九機と九七艦攻一八機の計一〇八機が米機動部隊へ向けて飛び立っていった。


 続けて南雲長官は第三次攻撃隊も速やかに発進させるよう命じる。

 第二次攻撃隊が発進してから一時間後、「赤城」から零戦三機と九七艦攻一八機、「加賀」から零戦三機と九七艦攻二七機、「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ零戦三機と九九艦爆一八機の合わせて九三機が慌ただしく空母の飛行甲板を蹴っていった。

 また、第二次攻撃隊ならびに第三次攻撃隊が発進して間もなく、「瑞鶴」から一三試艦爆一機が接触維持任務を帯びて攻撃隊の後を追っている。


 一航艦が第三次攻撃隊を発進させてしばらく後、ミッドウェーの飛行場から飛び立ったと思われる爆撃機の編隊が上空に姿を現しはじめた。

 上空警戒中の零戦が迎撃戦闘を開始し、飛行甲板で即応待機状態だった零戦が慌てて滑走を始める。

 一航艦は米爆撃機の波状攻撃がもたらす混沌の渦に巻き込まれていった。

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