第11話 たった一つの方法
昨晩、愛されることの充足をわたしは知ってしまった。
彩葉ちゃんを独占する手段を知ってしまった。
足りない彩葉ちゃんを埋められるのは彩葉ちゃんでしかないことに気づいてしまった。
「そんなことを言われたら本気で抱いてしまいますけど、いいんですか?」
頷くと同時に彩葉ちゃんが抱きついてくる。かかと立ちでわたしの顔に顔を寄せ、彩葉ちゃんの唇が重なった。
嫌悪はない。むしろ彩葉ちゃんだと思うと嬉しくさえあった。
「もう無理ですからね」
魅力いっぱいの彩葉ちゃんがわたしに夢中でいてくれることに信じがたさはあるものの、まっすぐで余裕がない様は少し嬉しいと感じていた。
昨晩の彩葉ちゃんはただ酔った勢いではなく、本気でわたしを求めてくれて、今も同じ思いでいてくれる。
口内を貪られることには慣れていなかったけれど、必死の様が可愛くて、全てを受け入れる。
「愛してます。田町さん」
もう止まりませんとベッドに誘われて抵抗できずに従うと、そのまま彩葉ちゃんにベッドに押し倒される。
昨晩とは違って、朝の光の中で見る彩葉ちゃんは、相変わらずの美少女だったけれど、必死さも浮かんでいる。
入社したばかりでまだ電話の応対も上手くできずにいた彩葉ちゃんとその表情が重なって見えて、今自分を見下ろす存在は確かに同じ彩葉ちゃんなのだと感じていた。
彩葉ちゃんとわたしは同じ思いではないことは分かっている。それでも手放したくはなくて、わたしを求めてくれることに嬉しさはある。
一方的に彩葉ちゃんからのキスが重なり、そのまま肌に口づけが落ちて行く。
戸惑いもなく彩葉ちゃんはその行為を続けて、知らぬ間に全裸にさせてしまっていて、全身を彩葉ちゃんの唇が這って行く。くすぐったくて身じろぎしても止めてはくれなかった。
「田町さん、もっともっと愛していいですか?」
耳元で囁かれた声は艶めかしくて、それだけでわたしを情欲の淵に沈み込ませるものだった。
美少女が必死でわたしの胸に吸い付いて、申し訳程度に膨らみがある乳房を唇で食んで行く。
昨夜は酔いがあって、体が雲の中にあったかのような自分のものであって自分のものでない感があった。でも、今は彩葉ちゃんによってもたらされる快楽に、確実に自分が墜ちていることが分かった。
彩葉ちゃんの手が下肢の間に伸びて、感じ始めていた場所を指の平で撫でて行く。それだけで体の奥から溢れるものが増す。
彩葉ちゃんの指と唇で、その場所をじっくり攻められ、与えられる快楽に堪えきれずに喘ぎを漏らしていた。
「気持ちよかったですか?」
何とかそれに小さく肯きだけを返す。
「可愛すぎます、田町さん。慣れてくださいね。これが私の愛し方なので」
「相阪さん……変じゃない? わたしの体」
「彩葉って呼んでください。私には全然似合わない名前ですけど私の名前なので、好きな人には名前を呼んで欲しいです」
「彩葉ちゃん……」
「もう死んでもいいかも……田町さんの上で腹上死って最高の幸せです」
「……それはだめ。わたしが淋しくないようにずっといて欲しい、から」
「そうでした。大丈夫です。もう他の人としたいなんて思わないくらい満足させる自信はありますから」
そう言うと彩葉ちゃんが再びわたしの肌に唇をつける。この行為を自分の中でどう整理すればいいのかを考える暇もないくらい、昨晩から立て続けに彩葉ちゃんによって快楽を与えられ続けている。
今までは全く知らなかったそれに、沈められて、それでも彩葉ちゃんを手放したくない思いだけはあった。そこまでわたしに夢中でいてくれることに嬉しさがあった。
その日は、結局夕方まで彩葉ちゃんに離しては貰えず愛し尽くされて、帰る前に二人でシャワーを浴びた。
一つのシャワーに身を寄せ合って二人で打たれる。彩葉ちゃんからのキスの求めにも、わたしは応じられるようになっていた。
彩葉ちゃんとのキスは甘くて、それだけで足りなかったものが満たされる気がする。
彩葉ちゃんに抱き寄せられ、体をぴたりと寄せて裸体同士を触れ合わせるだけで、体が既に期待をしてしまう。
「田町さんのここ、また溢れてきてますよ?」
「だって、彩葉ちゃんが触るから……」
彩葉ちゃんの細い指先がわたしの中を確かめるように沈み、指に粘性を持ったもの絡みつく。次から次へと溢れ出すそれを利用して彩葉ちゃんがそのまま指を深くまで埋め込み、中を掻き回されて思わず腰が震える。
「田町さんの体って、こんなにエッチだったなんて、今までよく恋人なしで我慢できましたよね」
「そんなの知らない……」
最早こういうことに掛けては彩葉ちゃんには敵うところがなさすぎて逃げ道すら残されていない。
「田町さんは私だけが知ってるでいてくださいね。私が全部教えるので、変にまわりに興味持たないでください」
「だめっっ……」
彩葉ちゃんの与える刺激に思わずぎゅっと彩葉ちゃんの背にしがみついて、果てへと導かれる。
「彩葉ちゃん……」
目の前の存在を求めると、彩葉ちゃんの唇で塞がれる。
「田町さん、可愛い……もう離さないですから」
そんなことを言われてわたしが彩葉ちゃんに敵うはずがなかった。
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