第3話『2度目の歌声』

週末が来た。

ここで一つの問題が出てきた。

何時から彼女は歌っているんだろうか、場所自体はそんなに遠くない、むしろ近いくらいだ、徒歩で十数分のところの公園、今の時間が午前11時、初めて見た時の時間は正確には覚えていない。


昼過ぎに一度出向いてみようと思う。

…なんだかストーカーみたいだな

向こうもそう思ってないかな、大丈夫かな

やっぱり今日は行くのやめようかな。

もし僕がすごい高身長のイケメンとかだったらなにもこういう事も考えなくていいのかもしれない。


まぁストーカーだと思われたらその時はその時だ。

まぁ昼過ぎに行ってみよう。


公園に着いた、周りを見渡したけどいない。

歌声が聞こえなかった時点でいないと思ったけど、少し待ってみてまた出向こうと思う。


…帰り道を歩いている最中だった、「おーい」と大きな声が響いた。

横をチラリと見たが僕以外に誰もいない。

だけど明らかに僕の方に向けて呼んでいる声。


後ろを振り返るとそこには高校にちゃんと登校していた時の友人がいた。


「久しぶりじゃん」

僕に話しかけてくるこの女性は気のいい友人だ、僕が学校に行かなくなった今も連絡をかなり入れてくれる。

きっと大勢の人から好かれている。


「最近元気?調子どう?」

僕の様子を伺っているのか少しよそよそしい感じだ。


「んーぼちぼち、かなまぁ気が向いたら学校行くよ、別に嫌ってわけではないし」

これは僕の本音だ。

彼女はなぜか笑顔になりそっかそっかーっと言って僕の隣を歩く。


「あっ!そういえば、メッセージちゃんと返信してよね!連絡返ってこないの結構気にするもんだからね」

そういえば返してなかった。


「ごめん、言い訳ではなんだけどスマホ全然触らなくて、スマホですることもないし」

僕の答えに彼女はそっか〜と少し残念そうに返事をした。


じゃあ私こっちだから、また連絡するからちゃんと返してよね!と言って彼女は別方向に歩いていった。

帰ったら一度返信するか。


一度家に帰ってきた。

今両親はいない感じだ。

両親は今でもラブラブしている。

息子の僕が少し照れてしまう程だ。

でも別に嫌な気分になったりはしない、人それぞれなんだから。


大方今日はデートにでもいっているんだろう。

映画とか見にいってるのかな、まぁなんでもいいや。


次は何時に行こうか、初めて会った時はあのくらいの時間だった思ったけど全く思い出せない。

でもまぁ、夕方前くらいに行ってみようか。

それまでどうするかと思い僕はノートパソコンを開いた。


起動するのはチャット型のオンラインゲームだ、だいぶ昔に流行った自分のアバターが2Dで街に出たりしてただ色んな人とチャットをするだけのオンラインゲーム。


ここにはかなり仲の良い友人がいる。

お互い顔も知らないし同い年ということ以外何も知らない、基本土日はほとんどログインしている。

多分喋り方からして男、なのだろうか、分からないがチャットをするだけの中なのであまり気にしたことがない。


「先週ぶり」

彼はログインした僕のところにすぐにやってきた。

「相変わらず僕のところに来るの早いな」

彼のアカウントの名前は零、なんでその名前にしたのか前に聞いたら彼曰く全てを零に戻したいからこの名前にしたそうだ。

いったい彼に何があったんだろう。


夕方前まで零とここ最近の話をした。

僕のことはそんなに話すことはないけど零の話を聞くのは面白いし為になる、こないだはみそ汁を温めようとコンロに火をつけたら温め終わって食べた後に火を消すのを忘れているのを焦げくさい匂いで気づいたらしく水分が全て蒸発していたらしい。


若干鈍臭い人だ。

でも話が面白いし、僕の話もまじめに聞いてくれてちゃんと会話ができるので零の事はかなり好きだ。


あっという間に夕方前くらいになっていた。

零にそろそろ辞めると言って僕は外に出る準備をした。

ただいまーと言う母さんの声、デートが終わって帰ってきたようだ。


おかえりと返事をして出かけようとする僕を見て行き先を聞かれたが「少し外に出てくるよ」と言ったら気をつけてねと一言、それだけ聞いて僕は公園に向かった。


公園に近くなると段々と歌声が聞こえてきた、胸が高まる、僕は早足になり向かった。


先週と同じ場所で彼女は歌っていた。

心地いい声だ、今日は僕の他にも立ち止まって聞いている人が数人いた。


彼女の歌はしばらく続き「聴いて下さってありがとうございます!」と最高の笑顔で周りに頭を下げている。

胸がドキドキする、彼女の笑顔を見るとドキドキして止まらない。

恋っていいなと1人噛み締めた。


見ていた人がいなくなり、僕もそろそろ帰ろうかなと思い公園から出ようとした

「まってくださーい」と彼女が僕に言った。


「先週と全然違う時間帯ですみません、大体はお昼前なんですが、たまに来れない時があって、その時は夕方前に歌っているんです」

彼女は少し申し訳なさそうに僕に言った。


「あ、そうなんですね、すごい歌声綺麗で演奏も上手で感動しました」

感想を言うと彼女は笑顔で「嬉しいです!ありがとうございます」と、笑顔を見ると僕まで嬉しくなってしまう。


「来週は絶対にお昼前、12時前に歌うのでお時間合えば絶対来てください!」

と言って彼女はアコギを背負って公園を出ていった。


少し喋れて楽しかったな。今日はいい一日だ。そう噛み締めながら僕も公園を後にした。

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路上で歌う君に見惚れた ひじぽん @hh00004

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