第2話『気付けば君のことを考えている』
外に出てから三日が過ぎた。
相変わらず僕は自分の部屋に引き篭もったままだ。
こんこん、とドアをノックする音
母さんの声だ
「ごめんなさい、今お母さん手が離せなくて、よかったら食材を買いに行ってもらえる?」
久しぶりに頼み事をされた、悪くない気持ちだ、僕は二つ返事で答えた。
母さんからメッセージで必要なものをスマホに送ってもらい、僕は近くのスーパーに足を運んだ。
簡単なものだ、これなら数分で買って帰れる。
…ここのスーパーには今置いてないな。
他のところに行ってみよう、久々の頼み事だし、ちゃんと全部揃えて帰りたい、全然親孝行できていないからこれくらいは役に立ってあげたい。
そう思った僕は少し離れたスーパーに向かった。
歩いて15分くらいの場所かな、グーグルマップを頼りに進んだついたスーパーはちょこんとした少し小さな店舗だった。
来る場所間違えたかもしれないと思いながらも僕は小さなスーパーに入った。
母さんに頼まれたものはすべてそろったな。
レジに並びながら僕は再度確認していた。
「お客様こちらのレジどうぞー」
呼ばれたレジに足を運ぶ、なんだか聞いたことのある声だった。
店員さんの顔を見て気づいた。
思わず「あっ」と声が出てしまった。
僕の驚いた顔で向こうも気づいたのか
「あぁっ!」と少し大きな声を出した。
三日前に公園で歌っていた彼女だった。
僕は何も知らない顔で商品の入ったかごをレジ前に置いた。
彼女も驚いた顔が戻り「袋はご利用でしょうか?」と僕に聞いてきた。
「あ、お願いします」
小さな声で僕は答えた。
黙々と彼女の作業が進む。
「お会計合計千三百円になります。ポイントカードはお持ちでしょうか?」
「あ、大丈夫です」
「かしこまりました」
何事もなく財布からお金を出した
「千三百円ちょうどお預かりします。」
といって彼女は僕にレシートを渡そうとした。
何を思ったのだろう、レシートを受け取る際に僕は
「今週末、あなたの歌、楽しみにしています」
言ってしまった。
さすがに気持ち悪がられそうだ。
でも彼女は笑顔で
「ありがとうございます、絶対来てください」
そういってくれた。
僕は買ったものを袋に詰め、スーパーを出た。
ドクンドクンと心臓に強い脈を打つ
顔が少し熱くなっているのを感じる
あぁ、間違いない、三日前の僕の思いは正しかったんだ、彼女に恋をしている。
恋なんて今までしないものだと思っていた。
ましてや一目惚れなんて絶対にないと思っていた。
そんな僕が、2回会って実感した。
彼女が好きだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます