第4話 ももたろう その3

さて、話は進みます。

龍之介と桃太郎一行は鬼ヶ島へ行軍中。


途中、鬼の監視と出くわし、取り逃がした鬼から情報は洩れ、

鬼ヶ島、絶賛警戒中。


さてさてたどり着いた鬼ヶ島前、明日は干潮の日。

明けを狙って攻め込みます。


「緊張してきたな。」

龍之介の言葉に うん。と頷く桃太郎。

たくましく育った青年になれども、その表情には幼きころの面影は残っている。

一人っ子の龍之介にも初めてできた弟のような存在だ。


さて今のうちにゆっくり休んでおこう。

そういって野営地にて仮眠を取ることにした。


その夜は驚くほど静かな夜だった。



さて明朝、まだ夜が明けていない頃、

みな起き、進軍に備えていた。

あとは潮が引くのを待つのみである。


時は満ち、潮は引いた。


全軍突撃ーーーー!!!


合図がかかり、一斉に走り出す。

龍之介たちが所属する犬隊は、先鋒だ。


我先にと島へたどり着き、建物を取り囲む。

簡易的な城と言ってもいいかもしれない。

洞窟と建物を器用に組み合わせたおよそ4階立ての大きな建物がそびえたっていた。

洞窟のおかげか、奥行きも相当ありそうだ。


地形は入り組んでおり、なかなか進軍が進まない。


ダガァーーン!!


地面に衝撃が鳴り響いた。

投石だ。

鬼が連携し、巨大な岩を投石してくる。

これには先鋒隊、ひとたまりもない。


雉隊は後方からの射撃を行う。

しかし、距離が詰められず、なかなか命中しない。


猿隊は、城へ侵入しようと左右へ展開し、挟撃に臨むが、うまくいかない。


場は完全に膠着状態。


龍之介も、桃太郎も、建物に近づけないでいた。


「クッソ、どうしたら、、ん??」


龍之介は腰に付けたあるものに手を触れ、思い出した。


そういえば、おばあさんから貰っていた物があった。


腰に下げている袋を開く。すると中に入っていたのは


「だ、、だんご??」


拍子抜けだ。この状況を打破するために何か秘策をと考えたが、

袋に入っていたのは団子が数個のみ。


その様子を隣で見ていた桃太郎。なんだか様子がおかしい。


「龍之介兄ちゃん、、そのだんご、僕にくれないかい、、?」


「な、なにを言ってるんだ桃太郎!こんな状況で、、あ!おい!」


龍之介の腰から袋ごとだんごを奪い取った桃太郎。


一つ、袋から取り出しそののま口に放り込んだ。


するとなんということでしょう。桃太郎の姿は鬼にも負けない大男に。


「桃太郎、、お前一体、、」


唖然とする龍之介。そんな龍之介をよそに筋肉は服がはちきれんばかりに、

眼光の鋭くなった桃太郎。鬼の城の方向をギロリと睨みつける。


僕は行くよ。そう一言告げると桃太郎は駆け出していきました。


そんな桃太郎を標的に、鬼はどんどん石を投げつけてきます。


ダガー―ン、ドガーーン。


ひらりひらりとかわす桃太郎。


「くっそ、いい加減あたれぇ!!」


城まであと一歩に迫った桃太郎。

そう叫んだ鬼の投石が眼前に迫る。


ふんっっ!!


刀を抜いた桃太郎。鬼が投げた投石を一刀両断。


ガラガラッ!

真っ二つになり崩れ落ちる。


「な、なんだあいつは、、」


投石もものともせず、駆け寄ってくる桃太郎の姿に

さすがの鬼も恐怖し始めました。


そうして城に乗り込んでいく桃太郎。


「す、すげぇ、、」


そんな姿を見ていた龍之介。桃太郎の残しただんごを見つめていた。


これにそんな力が、、俺も食べて力になれるのなら、、、


ゴクリ、、緊張しながらも、桃太郎に後れを取るわけにはいかないと意気込んで

袋から取り出した。


頼むぜおばあちゃん。そう願いを込めて口に放り込む。


すると突然、龍之介の体が高熱を帯びる。


「あ、熱い、、!!」


体中の筋繊維が千切れ、より太く再生している。

そして細胞が変化し、より硬く、より高密度に体中が変化していく。


熱さと痛みにのたうち回り、数分は経っただろうか。


龍之介はやっと起き上がることが出来た。


身体が軽い。体型が変化したわけではない。

しかし、身体が別人になってしまったかのように動く。


よし、これなら!と、桃太郎が進んだ鬼の城めがけ、龍之介は駆け出した。

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おとぎ廻廊~願いのために彼らを救え~ きょろすけ @kyo-suke777

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