第3話 ももたろう その2

桃太郎と名付けられた赤子はそれはそれはすくすくと元気に育ちました。


そのころ龍之介は、町はないけど村なら、、と言ったおじいさんの言葉に

村はあるのかい。と内心びっくりしながらも付近の村に出かけ、

情報を集めつつ、元の場所へ帰る手立てを探しながら

おじいさんやおばあさんの仕事を手伝っていました。

桃太郎ともまるで本当の兄弟のように過ごしていました。


しかし、村では不穏なうわさが流れます。

近くの村が鬼に襲われたらしい。

村人の多くは殺されてしまった。

食料も、金品も奪われた。


龍之介はうわさを聞き、おじいさんとおばあさん、そして桃太郎に

用心するよう伝えました。


そんな心配とは裏腹に、桃太郎の育つスピードは尋常じゃなく、すぐに少年ほどの大きさに成長しました。


そんな時、近くの村に悲劇が起こります。



いつも通り、おじいさんのお仕事を手伝っていると

村の方がやけに騒がしいのです。


「ちょっと様子を見に行ってくる。」


龍之介はおじいさんにそう伝えると村の方へ向かいました。


村に近づくと火の手が上がっているのが見えます。

村の入口へ着いた頃には、、ひどい有様でした。


家は壊され、人は横たわり、血を流しています。


大丈夫か!!駆け寄る龍之介に、村人は


「鬼だ、鬼が来た、、」


そう言い残し、力尽きてしまいました。


ちくしょうが!そう吐き捨てると、

龍之介は無事な人を探し回りました。


誰かいないのか!!!


その声に反応する人はいません。


村の端まで走っていくと、遠くに大きな人が見えました。

そう、鬼です。


龍之介の身長は178センチ、対して鬼は2メートルを軽く超えています。

身長だけではありません。体格も大きい。まるで、海外のフィジカルエリートを

集めたような集団です。


それに、手には棍棒のようなものを持っています。


これはまずい、いくら野球部で身体能力に自信がある龍之介でも、

さすがにこの集団には勝てません。


壊れた家の陰に隠れながら、鬼が立ち去るのをひっそりと待ちました。

恐怖、怒り、困惑、いるわけないと思っていた鬼の存在に様々な感情が

溢れ、握ったこぶしには血が滲んでいました。


鬼が立ち去ったのを確認し、まだ息がある人がいないか、確認して回りました。

すると何名か息のある人、隠れていて助かった人。その後帰って来て、たまたま村にいなかった人など数十名は助かりました。


一度、おじいさんおばあさんの家へ帰宅し、事の顛末を報告すると、

龍之介は村の復興の手伝いをするが、町へ報告に行くと伝えました。


龍之介が集めた情報から推察するに、時はまだまだ武士がいる時代。

何とか近くの大名に相談しに行き、村の荒らす鬼を退治してほしいと要請しに行くつもりです。


その話を聞いていた桃太郎は大いに怒っていました。

普段は優しい桃太郎。

しかしその表情は、まるでの鬼のごとく顔を歪ませ、紅潮し、震えていました。


とうさまとかあさまを守るため鍛えます。。

そうつぶやいた桃太郎。


話し終えた龍之介は町へ向かいました。


やはり自転車も、タクシーもない街並み。

2,3日かけやっと町にたどり着いた龍之介。


着いた町、ここを治めている人は誰だ。助けてくれ、村に鬼が出たんだ。

町を歩く人に声をかけました。


しかし、相手にしてもらえず、更には同心のような輩につかまる始末。

さぁ、厄介なことになりました。

縄で縛られ連れていかれた龍之介。


なんだか偉そうな人の前にひり出されました。


「お前か、ワシの町で鬼が出たと騒いでいたやつは。」


「鬼が村に出たんだ。おかげで村は壊滅してしまった。手を貸してくれ。」


「鬼が出ているといううわさは聞いておる。今は相手の根城を探している最中じゃ。貴様の村だけではない。様々な村から被害の報告は受けておる。」


「それじゃぁ、」


「すぐにとはいかんが、奴らをこのまま野放しにしておく気はない。そこは安心せい。兎に角、貴様は村へ帰って復興をしろ。わかったな。これ以上各村の税収が減ってはかなわん。」


「俺にも手伝わせてくれ!!」


「ふむ、、体格はいいのう。ま、無いよりましじゃろうて。そこの!」


龍之介を縛り付けていた男が呼ばれる。


「奴に刀渡してやれ。無いよりましじゃて。気概はありそうじゃ。」


そうして、刀を2本もらった龍之介。

近々討伐隊を徴収したとき貴様も来い。

そう伝えられ、村へ帰りました。


またまた2、3日かけ村へ戻った龍之介。


するとそこには、復興を信じられない速さで行う、青年、桃太郎の姿が。


いくら成長が早いとはいえ、まだ数ヶ月、1年も経っていません。

これには龍之介も驚きます。


あ、龍之介おにいちゃん。


自分の姿に気がつき駆け寄ってくる桃太郎。

「お、おう。おまえでかくなったなぁ」


沢山食べて、沢山動いているからね!


どれでもこうはならない。

まぁ、鬼がいるしなぁ、信じられないことは飲み込んで龍之介は村やおじいさんおばあさんに町で起きた内容を伝えた。


すると桃太郎が、僕も行く。

と言った。もはや青年の姿をしている桃太郎。

龍之介にも負けない体格の桃太郎にだれも反対する人はいなかった。

おじいさんやおばあさんは悲しそうな表情を浮かべていたが、、

龍之介は2本もらった刀のうち1本は桃太郎に手渡した。


そして数週間が経ち、町からの徴収が行われた。


龍之介と桃太郎が町へ向かった。

旅立つ前に、おばあさんから団子を、おじいさんからは着物をもらった。

心配はいらない、ちゃんと二人分だ。


心配を口には出せないでいる二人を背に、龍之介と桃太郎は歩き出した。




町へ着くとすぐに軍隊へ編成された。

犬隊、雉隊、猿隊の3編成だ。それぞれ200人はいる。

その上に偉い人なのだろう、総大将格の人が指揮を執っていた。


龍之介らは犬隊へ編成された。


向かう先は鬼ヶ島。干潮時しか渡れぬ海の先にある島じゃ。


行軍の最中にそう聞いた。

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