第2話 ももたろう その1

光に包まれてから目が覚めると、眼前に広がるは青空。

仰向けの状態から見える空は近く、青く澄んでいた。


体を起こし周りを見渡すと、辺り一面森。


「な、なんだここは。」


覚えのない場所、自分の住んでいた町の風景を見つけ出そうとするが、

心当たりは一つとして見つからない。


そうだ、たしか、、倉庫で声がして、、

絵が描いてある本が光りだしてそれから、、


いったいどこなんだここは。


辺りを見渡しても、鳥のさえずりが聞こえるだけ。

仕方ない、人を探そう。。


そう思い立ち、ひとまず森の中を散策する。


熊なんか出るなよ、、。

田舎で育った龍之介にとっては野生動物の恐ろしさは生半可ではない。


すると、カツーン。ジャキジャキ。ザザー。


木々が揺れ動く音がする。


恐る恐る近づいてみる。


老人だ。何をしているのだろう。


「すいませーーーん」

「うわあぁ。なんだおめぇは!」


老人は驚き、持っていた鉈をこちらへ向ける。

「す、すいません!驚かせるつもりは、、道に迷ってしまって。」


龍之介は謝罪しながら、老人に説明をした。


「この山はわしとばあさまの山だ。ここへさ来る奴はめったにいねぇ。

最初は盗賊かと思ったさ。」


「申し訳ありません。。それと町へ行くにはどちらに行けば、。」


「町?あんな遠く離れたところさ行くのか?とりあえず行くあて内ならわしの柴刈り手伝って家さ来たらええ。」


ひとまず出会えた老人の手伝いをし、詳しく話を聞くことにした。


集めた牧などを背負い、老人についていくと、そこには

あばら家のような木造の一軒家があった。彼らが建てたのだろうか。


「さ、ここさおいて家に入りな。」


龍之介は進められるがまま家に入ると、


中にはおばあさんが大きな桃をまじまじと見つめながらあたふたしていた。

まるで幼稚園児くらいはある大きさだ。


「まぁじいさんおかえり!大変なの、川からこんな大きな桃が!」

「なんだこりゃ、またでっかいももだなぁ、、。」


龍之介も驚いていた。何しろこのサイズの桃は見たことがない。


「あれ、あなたはだあれ?」


おばあさんの問いかけに、ここに来た経緯を説明した。


「そうだったの。ごめんなさいねかまってあげられなくて。何しろこんな大きな桃初めてみたんですもの。」


それはそうだろう。誰だって驚く。


「なぁ、割ってみんかこの桃。」


おじいさんの提案に龍之介もおばあさんもゆっくりと頷いた。


じゃあ、いくぞ。

それっ!!


おじいさんの掛け声と同時に桃はパカッと2つに割れました。


おぎゃーおぎゃー


するとどうでしょう。桃の中から出てきたのは、

とても元気な男の子でした。


「な、なんてことじじゃ、」


おじいさんとおばあさんは腰を抜かしてしまいました。

ついでに龍之介も。


落ち着きを取り戻したおじいさんとおばあさんは

こどもを抱きかかえ、


「これは、子を授からなかった私達への贈り物かもしれませんね。」


おばあさんの言葉に そうじゃなぁ、きっとそうじゃ。

と涙を浮かべながらうなずいていました。


桃から生まれた男の子、この子の名前はどうしましょう。


二人が話してるのを聞き、もらい泣きしている龍之介はハッと我に返りました。


「ももたろう、、?」

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