おとぎ廻廊~願いのために彼らを救え~

きょろすけ

第1話 むかしむかしあるところに

小説の人物にあこがれた。

自分はもしかしたらヒーローになれるのかも!

そんなそんな、誰もが思うこと。

気がつけば夢は見ずに現実を見る。

それが大人の証。

これは、まだ大人ではない、青年のちょっとしたお話。


俺の青春はどーこにいったのか。


歩く道には落ち葉が道を彩り、

感じられるほんの少しの肌寒さが冬の到来を気づかせる。


もう11月だもんなぁ。野球部引退してから受験勉強ばっかりだし。


進路や将来のことをあれやこれやと思い浮かべながら自宅への帰路をたどる青年の名前は「石田龍之介いしだりゅうのすけ


「ただいまぁー。。まだ帰ってきてないのね。」


彼は両親と3人暮らし。住んでるところは北海道の片田舎。

部活動も引退し受験真っただ中の高校生。

進路志望は教育大。得意な国語を教えつつ、

野球の顧問で甲子園が夢の高校生男児。


「しゃーない、勉強しに図書館でも行きますか。」


家には小説の山。本を読むのが好きなのだろう。

果たして、図書館でも彼は誘惑に勝てるのか、、


「こんにちはー。やっぱ図書館はいいねぇ。勉強が捗りそうだ。」

「うそこけ。まーた本読みに来たんだろう。」

「勉強もしてるさー。ま、田中さんも俺以外にお客さんもいないから寂しいでしょ?」

「なーにいってんだか。」


彼が訪れたのは、町の施設の図書館。

田舎にしては多少立派なもの。

そこで働く田中さん。御年58歳。

娘は嫁ぎ、たまに来る孫がかわいくてしょうがない。

龍之介のことはこどもの時から知っている。

彼は図書館の常連客だ。


図書館の一番奥は彼の特等席。

いつもの日当たりのいい場所で読書に耽る。


さて今日は何を読もうか。


図書館は3階建て。1,2階は図書室。3階は倉庫となっている。


「そーだ、龍之介。これ3階さもっていってくれねーか」

そこに見えるは大きな段ボール2個分の雑誌。

「もう腰が痛くて上がんねーんだわ。頼むー。」

「あー、わかったよ。」


さすがに断れない。田中さんが腰を痛めているのも知っている。

小さいころからお世話になってるのだ。断る方が野暮だろう。


「3階って倉庫の方?」

「そーだ。そのうち業者が来るから倉庫の奥さ置いといてくれ。」

「はいよー。」


そういって段ボールを台車に載せ、エレベーターへ乗り込む。

3階へ着くと、あまり人が立ち入らないのだろう。

ほんのり暗ぁい雰囲気に包まれている。


倉庫のドアを開け中に入る。電気をつけると埃っぽい倉庫の中に

ずらりと並んだ棚の数。

そこに並ぶは積み上げられた本の山と段ボール。


「かわいそうになぁ。。」


何度か訪れたことのあるこの場所。

本が大好きな彼にとってはやはり悲しい。


「この辺りかなぁ。よっこいせっと。」


ドスン。と音が鳴り埃が舞う。


さて、こんなもんかなぁ。

立ち去ろうと部屋の出口に向かう。


『__けて』


なんだ?

ふいに聴こえた声のような音に龍之介は振り返る。


「誰かいるの?」


音に問いかける龍之介。


『__すけて』


やはり声がする。恐る恐る声のような音のする方へ歩み寄る。


何だこの本?

そこにあったのは1冊の絵が描かれた本。


「見たことないなこれ。えっと、、これは題名か?」


表紙に描かれた文字を読む。


「えっと、、【ももたろう】?」



するとどうでしょう、本は輝きだし、彼を真っ白に包んでしまいました。


「うわあああぁあ!」


パサッ。倉庫に残されたのは本だけ。

彼は一体どこへ行ってしまったのでしょう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る