11. 錯綜する思惑

 ――ねえ芹奈。あと二つほど、頼みたいことがあって。『儀式』の日は来てくれない?

 ――ええ?


「あー、もしもし? あいりおねーちゃん、ひさしぶり!」

「お、まーくんじゃん。どしたの?」


 ――別に構わないけど……。あ、生贄として、ってことね。

 ――うん。で、あともう一つお願いがあって。


「来週、僕のお誕生会なの。おねーちゃんにお知らせ!」

「ふふ、もちろん知ってるよ? だって、お誕生会はこっちの家でやるじゃない。それに、まーくんの誕生日、忘れないよ」

「ほんと!?」


 ――警察に? 私が?

 ――そう。


「そっちのおうちに行くの、楽しみだなぁ」

「前はかくれんぼしたね」

「うん! 今度もやる!」

「……だね」


 ――いくら死体処理が完璧にできると言っても、時間はかかる。死体処理が終わる前に第三者が立ち入らないと……。『儀式』の場に芹奈がいたことについては、何とでも言えるでしょ。「家に呼ばれただけです」って言っときな。

 ――わかった。あいりの言うとおりに、やるよ。


「……あのさ」

「なぁに?」

「――――きっと、この家に名を残すよ、まーくんは」

「ふぅん? あいりおねーちゃんが言うならそうなのかな! そうだ、そろそろ僕は寝るね…………ママー? 電話代わってー?」


 そして、「終わり」はやってきた。

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